ビジョナリーリーダーシップと自律型人材で新たな道を拓くる。またその信条こそが、真に事業を繁栄させる根本だと断言してはばからないのである。」とあります。これは、昨今、企業に要請される事業活動を通じて社会課題の解決を図ろうとするESG(Environment:環境、Socia:社会、Governance:ガバナンス)の考え方にも通じるものがあります。三愛精神の根幹は、仕事を通して人のため社会のために役立ちたいという思いであると言えるのではないでしょうか。この経営という枠を超えた人生の哲学とも言える三愛精神を受け継ぎ、リコー三愛グループが人々や世の中の役に立つ企業集団でありつづけることが私たちの使命です。市村は、新製品に関するアイデアを生み出す際には、異なる専門性や経験、才能や性格を有する従業員を集めて、既存製品とその開発や販売のやり方に疑問を投げかけたり、時には否定したりして、抜本的に変えていくことを働きかけました。すると、斬新な案が創出され、取り組みの面白さが増し、創意工夫によって画期的な新製品誕生へとつながったそうです。なぜという疑問を抱き、必ずやそれを解くまで追求したともあります。現代は「VUCAの時代」とも呼ばれています。VUCAとは、Voatility(変動性)・Uncertanty(不確実性)・昧性)の頭文字からなる造語です。技術の進化、気候変動、パンデミックの影響などがその背景にあります。先行きの不透明さが増し、未来を予測することがいっそう難しくなっています。既成概念が覆り、ビジネスモデルの多くが通用しなくなるなか、新常識に立脚した新たな価値創造の重要性が高まっています。こうした状況において、企業は成長の道筋をどの方向に定めるのか、個人はどのような力を備えればよいのか、不安に感じることもあるのではないでしょうか。そこでは、進路を見極める高い見識を持ったリーダーと組織や社会に貢献するよう自らの意思で行動できる自律型人材の存在が重要となります。リーダーがまず果たすべき役割は、ありたい姿を描くことです。次にそこへの行程を示し、困難な状況に直面したとしても組織をゴールへと導く気概と決断力が不可欠です。働く現場においては、自身の役割と期待を理解した人材がチームとなってそれぞれの専門性や経験を活かして業務を遂行します。自律型人材には、自らの判断で行動するための責任意識、主体的に目標を設定しその達成を目指して学びつづけられる力が求められます。こうしたリーダーシップや人材活用のあり方は、時代こそ違うものの市村が実践を重ねてきことに他なりません。市村が身をもって示した哲学は、現代を生きる私たちにとって、あらためて学ぶべき教訓です。今こそ、市村が貫いた信念とも言える三愛精神に学び、それを力に、さらなる飛躍を遂げる時であると考えています。最後に、昭和21年12月、『三愛』(現在の『三愛会会誌』の前身)の創刊にあたり、その巻頭に記された最後の一文を紹介し、私の序とする次第です。私の愛してやまない社員諸君、今後とも三愛精神に徹して、日本の発展に全力を傾けようではないか。 Compexity(複雑性)・Ambguity(曖 l ilil 3
元のページ ../index.html#5