市村清ギャラリー

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三愛会キャラクター“チビ清”くん、紹介

三愛会キャラクター
“チビ清”くん

画像:チビ清くん

Profole

名前

チビ清(本名:市村 清)

誕生日

4月4日

年令

10歳(小学校4年生)

血液型

A型

出身

佐賀県三養基郡北茂安村
(さがけん みやきぐん きたしげやすむら)

好きなもの

将棋・プロレス・相撲

好きな食べ物

ラーメン、うなぎ、おそば

やんちゃでいたずら大好き。
だけど涙もろくて情に厚いおチビちゃん

みんな、「チビきよ」って呼んでね!
三愛会サイトや三愛会会誌に登場しているので、かわいがってあげてください。

市村清を観る

市村清の姿を動画でご覧いただけます。

※再⽣時に⾳声が流れますので、⾳量にご注意ください。

市村清を聴く

市村清の⾁声をお聞きいただけます。

※再⽣時に⾳声が流れますので、⾳量にご注意ください。

市村清と13人の賢人たち

市村清の人生に大きな影響を与えた人物を紹介するFM佐賀のラジオ番組を本サイトでもお楽しみいただけます。
本サイトでは音声だけでなく、テキストデータも閲覧できます。
FM佐賀の放送予定と本サイトでの掲載予定は以下のとおりです。
インターネット・スマホアプリ「radiko」(有料)でも聴くことができます。

第1回
市村新太郎

放送日2022年1月4日

講談師

明治33年...佐賀県の貧しい農家に生まれながら、一代で「リコー三愛グループ」を築き上げた男、市村清。戦前から戦後の激動の時代に深い愛と情熱を持って事業を立ち上げ、成功を収めた市村を支え、影響を与えた賢人たちを紹介します。

再生時間【3:07】

講談師

第一回目の本日は市村清の祖父である新太郎の巻。
場面は祖父・新太郎が最愛の孫・清に与えた牛が、
執達吏(しったつり)、いわゆる国の役人によって連れ去られるところから始まります。

やめて!連れてかんで!やめて!離して!

執達吏

そげんわけにはいかんと!これはお国が決めた事だけん。

一生懸命育てたとだけん!俺の小遣いで育てたとだけん!

執達吏

え~い、離さんか!あきらめちくれ!

じいちゃん!なんとかして!つれていかるっ!うしが、つれていかるっ!

新太郎

清…どがんも、出来んとじゃ...。

やめてーっ!連れていかんでーーーーっ!お願いだけんーーーっ!連れて、いかんでーーーっ!
(その場に泣き崩れる)うわーーーーーーっ!

講談師

貧しかった市村家。その年の税金を納める事が出来ず、
大事に育てていた子牛を、税金のかたとして、とられてくのでございます。

新太郎

清、お前は学校の成績は良かこたるばってん、うちじゃあ、とてもおまえば上の学校に出してやる事はでけんじゃろう。おどんが、一つ、よか方法ば教えちゃろう。お前に雌の子牛ば一頭こうてやる。そっば、自分で、どがんかして育てろ。そしてどんどん牛ば増やして売れ。そん金で中学とかに行くための学費ば稼ぎだそうって算段たい。どがんや?

悔しか...俺は、悔しか!

新太郎

清...だれが悪かわけでんなか...うちが貧乏だけんし方んなかとたい...。

講談師

「納得のいかない限り、権力や金の力に対して徹底的な反抗を試みて譲らないようになったのは、
この出来事があったからかもしれない。」…と市村にいわしめるほど、
この時の出来事は強烈に脳裏に刻まれるのでございます。

講談師

しかし、新太郎との思い出はこんな悲しい事ばかりではございません。
市村清が掲げる「人を愛する」という精神は、幼少期の清に対し絶え間なく注がれ続けた祖父・新太郎の愛情こそが、その土台作りをしていたのでございましょう。

「市村清と13人の賢人たち」。
祖父・新太郎の一席はこのあたりで...読み終わりでございます。

市村清からのメッセージ ~いま心に刻む13の言葉~

市村清が残した名言・金言を紹介するエフエム佐賀のラジオ番組をお楽しみいただけます。
エフエム佐賀では2021年1月5日から3月30日までの3か月間、約5分間の番組を13回にわたり放送しました。
ここでは放送時の音声だけでなく、テキストデータも閲覧できます。

第1回
「そのものを狙うな」

放送日2021年1月5日

タイトルコール

明治33年...佐賀県の貧農の家に生まれながら、戦前から戦後の激動の時代に、一代で「リコー三愛グループ」を築き上げた男、市村清。起業の神様、アイデア社長と言われた彼が遺した...いま心に刻みたい市村清からのメッセージを紹介いたします。

再生時間【3:40】
今回のことば
「そのものを狙うな」

ナレーション

明治33年4月4日。日本から遠く離れたフランスで、「パリ万国博覧会」がまさに開かれようとしていたこの日。佐賀県三養基郡北茂安村(きたしげやすむら)で市村清は生まれました。家は貧しい農家で、決して楽な生活ではありませんでしたが、この佐賀の大自然の恩恵の中で伸び伸びと育っていったのでございます。

(藁の上をゆっくり静かに歩みを進める音)

動くなよ…そう…そんまま…じっとしとけよ…えいっ!

(雀の羽ばたく音)

あっ!…くそぅ…。

父・豊吉

(遠くで)あはははは!清ぃ、まぁ~た逃げられたとか!こいじゃあ、雀ば獲りたかとか、逃がしたかとか分からんぞ?

くぅぅぅぅぅぅ。

ナレーション

父親である豊吉は鍋島藩の士族の出で、明治の初めにこの市村家に養子として入ってきました。身長176センチ体重94キロ。当時の人の中では、ずいぶんと大柄でした。士族の出らしく読み書きの素養もあり、弁も立つ方ではございましたが、性格はといいますと、ひどくものぐさでわがまま。一口で申しますと「変わり者」で通っておりました。

今度こそ…そーっと…あっ!(雀の羽ばたく音)また逃げられた…。

父・豊吉

どこば狙いよっとや?

うわっ!びっくりした!急に後ろに立つなて!

父・豊吉

なんば取りたかとや?

な、なんばて、雀に決まっとう。

父・豊吉

お前は雀ば獲るとに、雀自体ば狙いよるとか?

清(モノローグ)

はあ?ま~たおかしかことば言い始めた、こん、ふうけもんの親父は。

雀ば獲るとに雀ば狙わんで何ば狙えて言うとね?

父・豊吉

ちょっと、そんトリモチの棒ば貸してみ…よかか、清。雀はどっちに飛ぶとや?

そら、前に決まっとる。

父・豊吉

雀が一番大きくなるとはいつや?

そら、羽ば広げた時に決まっとる。

父・豊吉

なら、狙うとこはここやろが。

はっ!雀からそげん3センチも4センチも離れとって獲れるわけがな…。

(雀が羽ばたいた瞬間、トリモチに引っかかる)

あっ!獲れた!

父・豊吉

雀ば獲る時は、そのものを狙ったらでけん。雀の習性や状況ば考えて、一番タイミングの合った点。そいが急所ばい。

そのものを狙うな…。

ナレーション

目的と一致する方向は、人間の欲望とは離れたところに存在する。まともな農家仕事は一切やらず、勝手気ままな生活を送っているように見える父・豊吉。しかし、市村はこの父から、資質の上だけでなく、処世の心構えについても随分、多くのものを学んでいくのでございます。それは、市村の人生にも、その後起こすことになる事業経営にも、大きな糧となっていくのでございます。

第2回
「会社が伸びようとするには、結局、従業員が心から協力してくれるかどうかにかかっている」

放送日2021年1月12日

タイトルコール

明治33年...佐賀県の貧農の家に生まれながら、戦前から戦後の激動の時代に、一代で「リコー三愛グループ」を築き上げた男、市村清。起業の神様、アイデア社長と言われた彼が遺した...いま心に刻みたい市村清からのメッセージを紹介いたします。

再生時間【3:39】
今回のことば
会社が伸びようとするには、結局、従業員が心から協力してくれるかどうかにかかっている

ナレーション

昭和4年。隣国ソビエト連邦ではスターリンの独裁体制が完成したころ。それまでやっていた生命保険の代理店業務をやめ、当時大企業であった「理化学研究所」との結び目となる「理研感光紙九州総代理店」の看板を手に入れた市村清。はじめは福岡市の郊外にある小さな店舗でございました。市村、29歳の春のことでございます。

よ~し!これで俺も一国一城の主!働いて働いて働くぞ~っ!

ナレーション

とは申しましても、従業員は市村と私の二人だけ。主人は店主兼販売員。妻である私は女中兼事務員。市村は自分で外交もやれば、荷造り・配達も全部こなす。その傍ら、店の改装、印刷物の制作、電話の架設と自分が初めて得た城を、確実に堅固なものにしていったのでございます。そのかいあってか…。

井上

市村さん!わたくし、あなたの、ファンなんでございますよ~!

ナレーション

と、熱烈に私共を応援してくださる方もいらっしゃいました。

井上

私は、あなたのような働き手は見たことがありません!

ありがとうございます。

井上

市村さん、よかったら私の持っている家を使っちゃくれませんか?

はあ…。

井上

いやいや、敷金なんかいりませんよ!失礼ですけど、いまの…春吉ですか?
あそこではぁ何かと不便ではありませんか?

でも、そんな…(ここからしばらく井上と清の問答。フェードアウト。)

ナレーション

こうして、市村の活躍により3年後には、福岡の天神のど真ん中に店舗を構えることができるようになったのでございます。

(街がや)

幸恵、この2階建ての洋館が、新しい理研感光紙 九州総代理店事務所だ。

妻・幸恵

ずいぶん立派になりましたねえ。

仕事も軌道に乗ってきた事だし、新しく、3人の店員を雇うことにした。

妻・幸恵

小僧さんを?

身分は小僧かもしれんが、店員を呼ぶときは、必ず何々君と君付けで呼びなさい。
この先、この会社を、もっともっと大きくするためには、働き手が「心から協力してくれること」が肝心だ。働き手は、ただの使用人じゃないっ!
事業の協力者であるということを肝に銘じておいてくれ。

妻・幸恵

はい。

従業員の月給は、相場の6割増しの8円!

妻・幸恵

はい!

三度の飯も、仕事の時間も、すべて僕たちと同じ!

妻・幸恵

はい!

社員は、家族だと思ってくれ!

妻・幸恵

我が子の様に、大切にしますわ。

頼んだぞ!

妻・幸恵

はいっ!

ナレーション

この新しい拠点を得て、市村の仕事に対する意欲と研鑽が、いよいよ高まっていくことは、それはまた、別の話でございます。

第3回
損得を忘れてしたことが、意外な好結果になることもある。

放送日2021年1月19日

タイトルコール

明治33年...佐賀県の貧農の家に生まれながら、
戦前から戦後の激動の時代に、一代で「リコー三愛グループ」を築き上げた男、市村清。
起業の神様、アイデア社長と言われた彼が遺した...
いま心に刻みたい市村清からのメッセージを紹介いたします。

再生時間【3:35】
今回のことば
損得を忘れてしたことが、意外な好結果になることもある。

ナレーション

昭和6年。中国・奉天(ほうてん)の郊外、柳条湖(りゅうじょうこ)で、関東軍により南満州鉄道の線路が爆破され、満州事変の発端となる事件が起きたこの年。大牟田の三井三池製作所の中川原という部長の計らいで、理研の感光紙を試験的に使ってみようということになったのでございます。しかし、中川原部長が出してきた案は、従来、小さい筒の中にアンモニアと感光紙を入れ使うものを、大きなドラム缶で一度に100枚くらい現像ができるもの作れ!という無理難題だったのでございます。

社員

社長?なに悩んでるんですか?社長?社長?(しばらく呼びかける社員。それの上に)

清(モノローグ)

鉄工所に特注品を頼むとして、18円でできる。福岡から大牟田までの鉄道運賃が特別小口で2円だから、22円で見積れば2円の儲けか…。

よしっ!

社員

びっくりした!

(鉄工所の様子)

そんな、約束が違うじゃないですか!

鉄工所社長

そういわれてもね…うちも市村さんとこの仕事だけじゃないんでね。

わかりました20円…20円出すんで、何とかうちのを最優先してもらえませんか?

鉄工所社長

まあ…そこまで言うんなら…ねえ。

清(モノローグ)

よし、これで何とか納期までには出来上がる…しかし、鉄道で運ぶと3日かかる。トラックで運ぶしかないが、トラックでの運び賃が18円。それでは丸損だ…どうする?どうやる?何か策はないのか!

(トラックの音)

上条君!三井三池製作所まであとどれくらいだ?

社員

地図では、もう少しのはずなんですが…。

間に合え…間に合え…間に合えーーーーっ!

(昼 安物のブザー音 人のざわめき 車のブレーキ)

間に合った!

中川原

市村君(少し遠め。右後ろ)

あ、中川原部長!(トラックのドアを閉めながら)

中川原

自分で運んできたのかね?

はいっ!

中川原

その機械はいくらした?

すったもんだありまして、ここまでの運び賃も加えると38円かかりました。

中川原

それでは16円も損しているじゃないか?

損や得なんか考えていられません!今日が期限だったので、何が何でも今日届けなければと思って持ってきました。

中川原

そんなに汗だくになってまで…ふぅ…あなたという人がどんな人か、よくわかりました…あそこの水道で顔を洗ってらっしゃい。

はいっ!

ナレーション

この後、市村は三井三池製作所の受注を一手に引き受ける事となるのでございます。自己の収益にこだわり損得勘定に走るよりも、無駄も多いかもしれないが、損得を忘れてしたことが、意外な好結果につながる事もあるということを、市村は、悟ったのでございました。

第4回
どんな小さい顧客にも誠心誠意を尽くすことだ。
相手の立場をのみ込んでやれば、相手はきっと君たちのセールスマンになってくれる。

放送日2021年1月26日

タイトルコール

明治33年...佐賀県の貧農の家に生まれながら、
戦前から戦後の激動の時代に、一代で「リコー三愛グループ」を築き上げた男、市村清。
起業の神様、アイデア社長と言われた彼が遺した...
いま心に刻みたい市村清からのメッセージを紹介いたします。

再生時間【3:30】
今回のことば
どんな小さい顧客にも誠心誠意を尽くすことだ。
相手の立場をのみ込んでやれば、相手はきっと君たちのセールスマンになってくれる。

ナレーション

昭和7年。時の首相・犬養毅が暗殺される、いわゆる「5・15事件」が起きるこの年。
ある日、天神町にある会社から4キロ以上も離れたお客様から、感光紙を一本、いますぐ持ってこいという注文がございました。1本というのは80センチの10メートル巻きで、当時の売り値が80銭、たかの知れた注文でございます。
気の進まなそうな顔をする店員に、すぐ行くようにと、市村は言うのでした。

店員

社長、ほかに大口の仕事があるんですが…。

たった80銭の注文をした客は小さいだけに扱いは大切にしないといけない。すぐ行ってくれ。

店員

はあ…。

ナレーション

ところが、店員が出かけると間もなく、またそのお客様から電話がかかってきたのでございます。

客(電話)

すまん、市村さん!現像に使うアンモニアをうっかり注文し忘れた。
45銭ぐらいだろうが、それも1本ついでに持ってきてくれないか?

はあ…。

ナレーション

周りを見回しても誰もいない。

仕方がない。

ナレーション

そういうと、市村は自電車の荷台にアンモニアの瓶1本を括り付けたのでございます。

(セミの鳴き声。自転車をこぐ音)

今日はまた一段と熱いなぁ…いかんいかん!これも仕事これも仕事。

店員

(遠くから)あれ、社長!(ブレーキ)

おう!ご苦労さん!

店員

どっかへ配達ですか?

いや、なに、いま君の行ってきた家へ行くんだ。
アンモニアを注文し忘れていたというから持って行くところさ。

店員

なんだよあのおやじ!随分身勝手だなあ。

こら!そんなことを言うもんじゃない!。これが商売というものなんだよ。

店員

そういうもんですかねえ?

そういうもんなんだ。気をつけて帰るんだぞ。

店員

へい。社長もお気をつけて~。

(引き戸の音)

ごめんください!アンモニアをお届けに参りました~。

お客

あ!これは社長自ら!それもこんな熱いさなかに!まことにかたじけない!
ささ、こっちへ来て冷たい麦茶でも!

ナレーション

それからというもの、そのお客様は市村のことをすこぶる気に入った様子で…。

お客

もう、あたしは、がぜん、市村さんとこの感光紙だね!実に気持ちがいい男なんだよ!
どうせ買わなくちゃいけないもんだろ?だったら気持ちのいい男から買ったほうが、こっちも気持ちが良くなるってもんだよ。

ナレーション

(途中からオーバーラップして)と、行く先々で市村のことを宣伝してくれるのでございます。

そうか…こういうことなんだな…。

ナレーション

どんな小さい顧客にも誠心誠意を尽くすこと。
相手の立場を飲み込んでやれば、その相手はきっと自分のセールスマンになってくれる。
市村の、セールスマンとしてのモットーが確立されたのでございます。

第5回
人間は何もないところでも、工夫によっては何でもできる。

放送日2021年2月2日

タイトルコール

明治33年...佐賀県の貧しい農家に生まれながら、
戦前から戦後の激動の時代に、一代で「リコー三愛グループ」を築き上げた男、市村清。
起業の神様、アイデア社長と言われた彼が遺した...
いま心に刻みたい市村清からのメッセージを紹介いたします。

再生時間【3:34】
今回のことば
人間は何もないところでも、工夫によっては何でもできる。

ナレーション

第一次世界大戦によって膨張しきった日本経済界が、いよいよ破綻の兆しを見せ始めた昭和2年4月。上海領事館司法部からの「いわれなき横領」の罪で逮捕された市村は、すっかり腹を固めて、監房の中での読書三昧の日々を送っていたのでございます。

監房仲間1

先生…先生。

ん?どうした?

監房仲間1

市村先生。こう退屈じゃかなわねえ、なんか退屈しのぎになるようなことありませんかねえ?

君たちも本を読んだらいいじゃないか。

監房仲間2

いやいやいや、あっしたちは、その本なんてもの読むくらいなら寝てたほうがいいんです。
めんどくさい。

監房仲間1

もっと手軽なやつありませんかね?

手軽なやつって…君たちは娑婆にいるときは何して暇をつぶしてたんだい?

監房仲間2

もっぱら、将棋ばかりを打っておりやした。

将棋ったって、この監房の中には盤もなければ駒もない。
看守に頼んでも差し入れちゃくれないだろう?

監房仲間1

だから何かありませんかって聞いてるんじゃないですか。

ふむ。まあ、ないから諦めろというのは、僕の性に合わん。
ちょっと考えてみるから待っていたまえ。

幸恵M

そういうと市村は、それまで読んでいた本を伏せて、何もない監房の中を見回してみたのでございます。

何もない…何もない…何もないところから何かを生み出す…どうする…どうする…
どうやれば…ん?…あれは何だ?あの、天井の角にあるやつ。

監房仲間2

角?ああ、あれは近くの煙突から降ってきたすすが、風の塩梅かなんかであそこに溜まってるんじゃないですかい?

すす…すみ?…盤…はっ!枕!…駒は?…芯…

監房仲間1

先生…どうなさったんで?

はい!きた!どーん!

監房仲間

しーしーしー!

ちょっと集まってくれたまえ。

監房仲間

ヘイ…。

これからは、あのように集まったすすや飛んできたすすを一か所に集めておいてくれたまえ。
ある程度集まったら、それを水に溶いて墨汁にする。それで将棋盤と駒を作る!

監房仲間2

将棋盤っつったって、そんな木、用意できませんよ?

それは4人の木枕をこう四角に…合わせて…ほら!

監房仲間1

将棋盤だ!

監房仲間2

駒はどうやって作るんです?

トイレットペーパーの芯を使う!
芯がたまってきたら、週に一度の爪切りの時に駒の形に切り出そう!

監房仲間

なるほどお!

ナレーション

何もないところから何かを考え出す興味。
与えられた条件の中で最高のアイデアを探し出す面白さ。
後年「アイデア社長」の異名をとった市村の片鱗を見せる出来事だったのでございます。

第6回
仕事はあきらめてはいけない。最後の一押しが成否を決めるのだ。

放送日2021年2月9日

タイトルコール

明治33年...佐賀県の貧しい農家に生まれながら、
戦前から戦後の激動の時代に、一代で「リコー三愛グループ」を築き上げた男、市村清。
起業の神様、アイデア社長と言われた彼が遺した...
いま心に刻みたい市村清からのメッセージを紹介いたします。

再生時間【3:31】
今回のことば
仕事はあきらめてはいけない。最後の一押しが成否を決めるのだ。

妻・幸恵(ナレーション)

昭和3年。上海での150日にも及ぶ監房生活ののち、市村と私は、日本へ戻ってまいりました。あっという間に無職に転落してしまった市村は保険外交員として熊本の地に降り立ったのでございます。

すーーーーはーーーー…よしっ!

妻・幸恵(ナレーション)

意気揚々と取り組んだ保険外交員の仕事だったのでございますが、そううまくはいかず、実に2か月もの間、ただの1件さえも契約までたどり着けなかったのでございます。

富国徴兵保険の市村でございます。

妻・幸恵(ナレーション)

市村が、この日最初に訪れたのは、これまでに8度訪れ、その度に会ってももらえなかった、私立大江高等女学校の校長をしていた、竹崎八十雄様の家でございました。

竹崎

やあ、きましたね。あなたが来るのを待っていたところですよ。ささ、中へ。

妻・幸恵(ナレーション)

しかし、この日に限っていきなり客間に案内されたのでございます。

竹崎

市村さん、あなたの様なやり方で、保険はとれますかね?

…なにを…。

竹崎

ははは、失礼。気になったもんですから…。

実は、まだ一件もとれていないのです。

竹崎

そうでしょう。どうもあなたのやり方は立派すぎる。

立派すぎる…。

竹崎

女中が今日は留守ですと言えば、ああそうですかと言って帰る。
しかも、あなたは帰ると必ず手紙をくださる。

一応、お伺いした事をお知らせしようと思いまして。

竹崎

どうせ勧誘の手紙だと思って、開けても見なかったのですが、それが、5回、6回と重なるとやはり気になってしまう。

ああ、ご迷惑でしたか、気付きませんで。

竹崎

いやいや、迷惑などではない。
現に、あなたはどういう人なんだろうと、家内とのはなしの種になっていたのです。

はあ。

竹崎

この前、8度目の手紙をいただいた時、開けて読んでみました。

…え?

竹崎

文章も、字も立派だし、誠意もあふれている。
このような人なら保険を任せてみてもいいと思ったんです。

…それは…。

竹崎

保険に入りましょう。今度あなたが来たら入ろうと決めていたんです。

…ありがとうございます!ありがとうございます!

清(モノローグ)

仕事は絶対にあきらめてはいけない!最後の一押しが事の成否を決めるんだ!

妻・幸恵(ナレーション)

市村が熊本にやってきて69日目の出来事でございました。
奇しくも、市村がこの保険外交という仕事を投げ出そうとして、わたくしが「あきらめないでください」と諫めた次の日のことでございました。

第7回
人生いかなる面においても創意工夫というものがいかに貴く大切であるか。

放送日2021年2月16日

タイトルコール

明治33年...佐賀県の貧しい農家に生まれながら、
戦前から戦後の激動の時代に、一代で「リコー三愛グループ」を築き上げた男、市村清。
起業の神様、アイデア社長と言われた彼が遺した...
いま心に刻みたい市村清からのメッセージを紹介いたします。

再生時間【3:38】
今回のことば
人生いかなる面においても創意工夫というものがいかに貴く大切であるか。

ナレーション

昭和3年。市村が富国徴兵保険の保険外交員として臨んだ「保険外交熊本の陣」が69日目にしてようやく終わりを告げ、その契約を皮切りに契約高は日を持って上昇していったのでございますが、熊本での生活は、まだまだ貧しいものでございました。

魚屋

今日はヒラメにカンパチ、鯛!生きのいいのが入ってるよ~。

妻・幸恵

あのう…。

魚屋

へいらっしゃい!何にしましょう?

妻・幸恵

えーっと…。

魚屋

どうです?今日は景気づけにドカーンと鯛なんて!

妻・幸恵

イワシ…いただけますか?

魚屋

またですか?奥さんとこ、ここんとこず~っとイワシじゃないですか。
ほら!これなんてどうです?有明海でとれた新鮮なイカ!
ほら、透き通っちゃって向こうが見えるくらいに、ねえ。

妻・幸恵

イワシ…ください。

魚屋

なんだよ、世知辛いねえ。たまにはいいもん食わしてやんないと、旦那さんに愛想つかされちゃうよ、はいこれ、イワシ。

妻・幸恵

ええ…でもイワシが食べたくて…。

魚屋

(他のお客さんに)あ!奥さん!見てくださいよこのカンパチ!
出世魚だから縁起がいいよ!

妻・幸恵

はあ…。
と言われたのが一週間前。それがあんまり悔しかったもんですから、それから毎日イワシしか買わなかったんです。もう、毎日イワシ!

ふ~ん…え?でも、毎日イワシだったかな、晩飯。

妻・幸恵

そこですよ!魚屋さんには馬鹿にされたイワシですけど、そのイワシをいかにして馬鹿にされないようにするか!

お、おお。

妻・幸恵

わたくし、考えに考えました。もう、寝ても覚めてもイワシのことしか考えてません!

それはそれで、ちょっと…。

妻・幸恵

覚えてらっしゃいます?どんなイワシが出てきたか?

えっと…。

妻・幸恵

1日目が焼き魚、2日目が煮つけ、3日目が天ぷら、4日目ここが苦しかったつみれ汁!5日目梅肉挟み焼、6日目白みそ焼き、そして今夜が、ででん!イワシの糠炊き!

す、すばらしい。

妻・幸恵

でもね、思ったんです。こんなことがあったからこそイワシ料理の工夫ができた、ひいては、料理というもののコツを得られたんじゃないかなあって。

幸恵…そうだな、人生いかなる面においても、創意工夫が、いかに貴く大切であるか。
無理だと思えることも、それを懸命に究明すれば、道は開けるし、いかなる困難にめぐり会おうとも、決して恐れひるむべきではない、ということだな。

妻・幸恵

それでね、感謝の言葉を伝えに行ったんです、魚屋さんに。そしたらえらく褒められて、ほら、こんなにいただいちゃいました、イワシ。明日からまたイワシ三昧ですよ~

お、おお…たのしみだなぁ~…うん…。

ナレーション

「至難不可能と見ゆることも、これを懸命に究明するとき、道は豁然と開ける」
市村は、この日の出来事を楽しそうにこう語ったのでございます。

第8回
アイデアを出そうと思えば、何から何まで絶えず関心を持ち続けることが最大の効果を上げる根本だ。

放送日2021年2月23日

タイトルコール

明治33年...佐賀県の貧しい農家に生まれながら、
戦前から戦後の激動の時代に、一代で「リコー三愛グループ」を築き上げた男、市村清。
起業の神様、アイデア社長と言われた彼が遺した...
いま心に刻みたい市村清からのメッセージを紹介いたします。

再生時間【3:45】
今回のことば
アイデアを出そうと思えば、何から何まで絶えず関心を持ち続けることが最大の効果を上げる根本だ。

ナレーション

昭和20年代。この時期は市村にとって追風(おいて)に帆を揚げる時代でございました。明治神宮の再建、羽田空港においての三愛石油のハイドランドシステムによる給油、銀座の街を救うために作られた「西銀座デパート」の開店など、「アイデア社長」と呼ばれるまでの活躍を見せたのでございます。

運転手

市村社長。西銀座デパートの開店おめでとうございます。一体どうやったら、あんなふうに、次から次にアイデアが出てくるもんなんですかねぇ。

そんな簡単に、ポンポン出てくるわけじゃないんだよ。

運転手

何か、コツみたいなものがあるんですか?

コツ…コツねえ…考えたこともなかったな…。まず、僕は、アイデアを生み出すために、そのものを否定することから始めるね。

運転手

否定…ですか?

そう。このままでいいと思ったら何も出てこない。そして、その次には、何を見ても「なぜ」という疑問を持ち、疑問を持ったら必ずそれを追究する。疑問を持ってもそのままにすれば、何も生まれてこない。追究することが大切なんだ。

運転手

「疑問」をもって「追求」する…なるほど。

珍しいと思ったことにすぐ疑問を持って、またそれをどんどん追究していくと新発見が次々と生まれてくる。そういうふうにしていくと、世の中にアイデアのタネはいくらでもあると、私は考えるんだが、君はどう思う?

運転手

え?いや、私みたいなもんには。

(笑)それはそうだ。実のところ僕も四六時中考えてるわけじゃない。今君に問われて自分で話しながら「ああ、私はこんな考えの持ち主だったんだ」と再確認しているところだよ。貴重な経験をさせてくれてありがとう。

運転手

いやいや、そんな風に言われたら、わたくし困ってしまいます…私みたいな凡人は…。

でも、大発明や大発見なんてのは、その道の専門家によってなされることは非常に少ないんじゃないかな?

運転手

と、いいますと?

例えば大きな板ガラスの製法はどこが開発したと思うかね?

運転手

板ガラス…なら、ガラス屋さんでは?

アメリカのフォード社だよ。

運転手

フォード社?あの、自動車を作る会社の?

そう。ガラスなんてフォードには全く専門外のことであるにもかかわらず、だ。だから君も、何事にも興味を持ち、それを追求していけば、何か大発見をするかもしれないよ。

運転手

そんなもんなんですかねえ?

そんなもんだよ。エジソンなんて、学者でもない全くのシロウトだが、あれだけの発明をやったんだから。

ナレーション

アイデアを出そうと思えば、何から何まで絶えず関心を持ち続けることが、最大の効果を上げる根本だ。この信念が市村の心の中に絶えず響いているのでございます。

第9回
もし成功に秘訣があるとすれば、他人の立場を理解し、他人の立場から物事を見る能力を持つことだ。

放送日2021年3月2日

タイトルコール

明治33年...佐賀県の貧しい農家に生まれながら、
戦前から戦後の激動の時代に、一代で「リコー三愛グループ」を築き上げた男、市村清。
起業の神様、アイデア社長と言われた彼が遺した...
いま心に刻みたい市村清からのメッセージを紹介いたします。

再生時間【3:21】
今回のことば
もし成功に秘訣があるとすれば、他人の立場を理解し、他人の立場から物事を見る能力を持つことだ。

ナレーション

「適正価格」の導入や「大衆への奉仕の精神」などが社会に受け入れられ、戦後スタートした商店としては、異常な繁栄を見せた三愛でございましたが、昭和25年ごろになると事業縮小を余儀なくされるのでございます。

人事課長

臨時の数人の女学生のアルバイトですか?

そうだ。

人事課長

そんなの雇って、何するんですか?

東京にある大会社、大銀行、大デパートの婦人用トイレットに潜ませて、そこで行われているご婦人方の会話をノートに取ってもらうんだ。

人事課長

ええっ!社長、お気は確かですか?

おお!いたって平常だ!そればかりか、こんなにいいアイデアを思いついた自分自身を褒めてやりたいくらいだ!

人事課長

はあ…。

つまりはこういうことだ。戦後の女性解放によって、家の中で花嫁修業をするより、外に出て働こうという女性が格段に増えているんじゃないか?

人事課長

まあ、それはそうですね。

これからの世の中は、こういった女性が中心になっていくんじゃないか?

人事課長

それと、婦人用トイレットがどう関係しているのかさっぱり…。

いいから!私を信じて!すぐに取りかかりなさい!

ナレーション

この、一風変わったアルバイトに、学生たちは面白がって毎日出かけたのでございました。

アルバイトに頼んでおいたこと、まとめてもらえたかね?

社員A

はい。報告します。今、世の中の恋愛というのは男性対女性店員やオフィスガールとの間に行われているという事がわかりました。

社員B

戦前に購買層の中心であった主婦層は、家庭の生活に追われて、あまり自由にお金を使えないという事です。

社員A

それに付随して、新しい購買力の中心は20歳前後の若い職業婦人に移っており、その中には上流家庭の娘も大勢いるという事がわかりました。

社員B

家庭の枠から出て、働きながら結婚準備をしているので、収入のほとんどは自分のおしゃれの為に使っているとのことでした。

なるほど…。

ナレーション

こうして、トイレ探索という奇抜な市場調査から生まれた市村の構想は…。

婦人のおしゃれ専門店・三愛。

ナレーション

と、今までに、誰も考えつかない斬新なものでございました。

もし成功に秘訣があるとすれば、他人の立場を理解し、他人の立場から物事を見る能力を持つことなんだ。

ナレーション

自分のことばかり考えずに、他人の立場を理解し自分を客観的に見ることが必要なんだと、市村は悟るのでございます。

第10回
事業の本質は、世のため人のために尽くすということにある。

放送日2021年3月9日

タイトルコール

明治33年...佐賀県の貧しい農家に生まれながら、
戦前から戦後の激動の時代に、一代で「リコー三愛グループ」を築き上げた男、市村清。
起業の神様、アイデア社長と言われた彼が遺した...
いま心に刻みたい市村清からのメッセージを紹介いたします。

再生時間【3:35】
今回のことば
事業の本質は、世のため人のために尽くすということにある。

ナレーション

市村は、軍人・役人・商売人と、立場・役職を問わず様々な方々からご教示をいただいておりました。

失礼いたします。市村でございます。

柳川

おお、市村さん。ようきなさった。ささ、そちらへ。

ナレーション

この方はかの杭州湾上陸作戦を成功させた柳川平助とおっしゃる方でございます。柳川様は非常に哲学人的な要素をもっておいでで、軍人でありながら司法大臣を務められたこともある方でございます。

柳川

市村さん、あなたは事業家だが、世界で一番偉い実業家はだれだと思いなさるか?

世界で一番偉い実業家、ですか?

柳川

そう。

考えたこともなかった…ロックフェラーのような大金持ちになって社会事業に莫大な寄付をしている人…いやいや、大実業家ではあるが「一番偉い」かといわれると…。自動車会社フォード・モーターの創設者ヘンリー・フォード!フォードのように新しい生産方式を考え出して次々に事業を経営していく、ああいう人が偉いのではなかろうか…。

柳川

普段、そんなこと考えておられなかったからお困りのようですね。

はあ…じつは、そうなんです。

柳川

では私の考えを申し上げましょう。私は、釈迦が世界一の実業家ではないかと考えるのです。

お、お釈迦様ですか?仏教の?

柳川

ええ。

はあ…。

柳川

ははは、いささかご不満のようですな。お釈迦様がこの世に現れて以来、三千年余りになるが、いままでの仏弟子の数は、恐らく何億という数になる。彼ら仏弟子たちは、釈迦の教えをそのまま伝えるだけで信徒から貢ぎ物を受け、立派な寺院を建ててもらい、伝道以外には働かないで食っていける。

はい。

柳川

また、東洋の大堂伽藍といえばことごとく仏教徒により献納されたものばかりで、日本のいわゆる名所旧跡の大部分もそうでしょう。

清(モノローグ)

なるほど…お釈迦さまになぜ何百億もの人が心を捧げてきたのか。それは私利私欲を捨てて、だれもが幸福になるようにという悲願をもたれたからだ。いいかえると、大きな人類愛の上に立たれたからこそ、それだけの人の心をつかむことができたんだ。

柳川

いかがかな?

まさに!まさにでございます!

ナレーション

事業というものは、ただ儲かるだけではだめだ。あくまで何らかのかたち、意味で社会奉仕をしようという念願のもとに、正しいことを真面目にやることなのだと、市村はこの、柳川との問答を、心に刻んだのでございます。

第11回
儲けると儲かるは違う。儲けるのはどんなにうまくても限度があるが、儲かるということは無限だ。

放送日2021年3月16日

タイトルコール

明治33年...佐賀県の貧しい農家に生まれながら、
戦前から戦後の激動の時代に、一代で「リコー三愛グループ」を築き上げた男、市村清。
起業の神様、アイデア社長と言われた彼が遺した...
いま心に刻みたい市村清からのメッセージを紹介いたします。

再生時間【3:16】
今回のことば
儲けると儲かるは違う。儲けるのはどんなにうまくても限度があるが、儲かるということは無限だ。

ナレーション

昭和22年...市村は、第二次世界大戦の敗戦により荒みはてた明治神宮の再建という無理難題に取り掛かるのでございます。

ずばり!結婚式場・明治記念館!

宮司

結婚式場・明治記念館。

そう!今度の戦争で若いまま未亡人になったり、婚期を遅らせた女性はたくさんいます。また、疎開から戻ってくる人、外地からの引揚者、これはおびただしい数になるでしょう。

宮司

はい。

これらの人が落ち着いた時、結婚に直面する場合が急増するに違いありません。

宮司

なるほど。

もし、憲法記念館のところに、大衆的な結婚式場を開き、結婚相談から、挙式、披露宴の一切を斡旋できるとしたら、世の中の人はどんなに喜ぶ事でしょう!神社といえば、結婚式。今までと全く違う事をやるわけではない!

ナレーション

こうして、廃墟同然の建物を、一カ月足らずで結婚式場にするという、市村の無謀とも思える挑戦が始まったのでございます。

ここに、明治記念館の、開館を宣言します!

財界人

市村君、どうにか間に合ったな?

ありがとうございます。

ナレーション

この明治記念館は、発足してまたたく間に軌道に乗ってゆくのでございました。

幸恵。私は今度のことで、痛烈に感じる事があったよ。

妻・幸恵

なんでございますか?

「か」と「け」の違いさ…。

妻・幸恵

「か」と「け」の違い…。

人間とは欲深いもので、なにがなんでも儲けよう儲けようとする。でも、そういう気持ちでやる事業には人間の欲というものが出てきておのずと限界がある。ところが、世の中の為にやるのだという精神で、その道に外れないようやっていけば自然に儲かっていくものなんだ。また、その方がむしろ、利益は無限に広がっていく。

妻・幸恵

儲ける経営より、儲かる経営、という事ですわね。

ああ。この事は、しっかりと肝に銘じておかなければな。

ナレーション

市村の経営哲学の一項目「儲ける経営より儲かる経営」は、このときの経験に基づくものでございました。

第12回
できない理由を考える前にできる理由を考えてくれ。

放送日2021年3月23日

タイトルコール

明治33年...佐賀県の貧しい農家に生まれながら、
戦前から戦後の激動の時代に、一代で「リコー三愛グループ」を築き上げた男、市村清。
起業の神様、アイデア社長と言われた彼が遺した...
いま心に刻みたい市村清からのメッセージを紹介いたします。

再生時間【3:29】
今回のことば
できない理由を考える前にできる理由を考えてくれ。

ナレーション

昭和25年...敗戦国としてまだまだ物がない時代だった日本。カメラ業界は比較的復興が早かった産業でございました。その二眼レフカメラの世界に、市村率いる理研光学工業株式会社が一石を投じようとしていたのでございます。

新しいリコーフレックスⅢ型は従来のカメラの価格の半額以下を目指したい!

ナレーション

当時の二眼レフカメラは1台2万円から3万円もする高級品。一般大衆には高嶺の花の代物でございました。

社員A

半額以下だなんて!二眼レフカメラが高価なのには理由があるんです!

社員B

カメラなんてのは精密機械なんです!コストを削減するとその精密さに欠けてしまう!無理です!

社員C

いいカメラは、職人が丹精を込めて作り上げるんです!どんなに頑張っても月に数百台作り上げるのがやっと!それを、そんな価格で売るなんて無理です!

社員A

二眼レフカメラは神が与えたもうた芸術品なのです!もう改良する余地もない!無理です!

社員B

この本体鋳物のダイカストだけでいくらかかると思ってるんです?無理です!

社員C

大量生産すればいいですって?いったい何人の職人を雇わないといけないと思ってるんです?無理です!

社員ABC

無理です!無理です!無理です!

できない理由を考えるのは、もう、十分だ。今からは、できる理由を考えてくれ。

社員C

あのう…ベルトコンベアシステムを取り入れると、カメラの大量生産は可能かもしれません。

ベルトコンベアシステム…月どれくらいできる?

社員C

えと…ざっと1万台は可能かと。

よし!

社員B

本体をダイカストではなく板金で製造するとコストが抑えられます。

よし!

社員A

撮影レンズとファインダーレンズのフォーカスリングをギアでかみ合わせて連動するという簡易な方式を採用してローコストに抑えることができます。

専門的過ぎてよくわからんが、とにかく、よし!

ナレーション

こうした様々な努力によってリコーフレックスⅢ型は当初の目標価格を大きく下回る6,800円という価格で発売され、定価販売の銀座三愛の前には東京だけではなく、地方から買い出しに来る人までの行列ができたのでございます。

ときとして、人は「できない」「無理だ」と相手に伝えるため、頭をひねってその理由や言い訳のほうをあれこれ考えることがある。だが、それは後ろ向きの努力だ。どうせ努力するなら、前向きの努力、どうすればできるかを考えようじゃないか!

ナレーション

市村は、営業マン時代には努力という方法で、そして会社の社長になってからは逆転の発想という方法によって、次々と「できない」を「できる」に変えていったのでございます。

第13回
人の行く裏に道あり、その道に徹すれば、必ず道は開ける。

放送日2021年3月30日

タイトルコール

明治33年...佐賀県の貧しい農家に生まれながら、
戦前から戦後の激動の時代に、一代で「リコー三愛グループ」を築き上げた男、市村清。
起業の神様、アイデア社長と言われた彼が遺した...
いま心に刻みたい市村清からのメッセージを紹介いたします。

再生時間【4:00】
今回のことば
人の行く裏に道あり、その道に徹すれば、必ず道は開ける。

妻・幸恵

失礼いたします。

村山

ああ、おかけになって…。

妻・幸恵

…検査の結果が出たのですね。

村山

はい…誠に、残念ですが…市村君は…食道癌です。

妻・幸恵

食道癌…。

村山

あかちゃんのこぶし大の腫瘍が食道に見つかり、それが、頸部のリンパ節と肝臓に転移しております。

妻・幸恵

市村は…市村は助かるんですか?

村山

もって…三か月。

妻・幸恵

さ、三か月?

妻・幸恵(モノローグ)

あまりにも残酷な宣告でございました。私と、市村の五十年来の友である村山医師と、二人、悲しみにくれるほか、何もできる事がなかったのでございます。

幸恵…幸恵はおらんか…。

妻・幸恵

はい…ずっとおそばにおりますよ…。

幸恵…わたしは、最近、楽しい夢を見る事がない…。

妻・幸恵

…どんな夢を見られるんですか?

いつも見るのは、子供のころの苦しかった生活の夢ばかり…そんな夢を見ると、ひどく体にこたえてしまう。

妻・幸恵

…さあ、今日はいい夢が見られますように、私が、ここで、お祈りしておりますから…。

子供は…やはり…苦労させるべきではない…私が、生涯太らなかったのは、その、苦労のせいだったんじゃなかろうか…わたしは、ただ、ただ、精神力だけで生きてきた…。

妻・幸恵

ええ。ずっとおそばで見ておりました。

人の行く裏に道あり、その道に徹すれば、必ず道は開ける。

妻・幸恵

なんです?そのお言葉。

人と同じことをやっていては成功は難しい。自分なりの道に徹することが成功につながる。そう思って生きてきた。

妻・幸恵

ええ。あなたはその通りに生きてこられた…。

私は…人の役に立てたんだろうか…人を助けてやる事が出来たんだろうか…。

ナレーション

昭和43年12月16日。市村は、68年と8カ月余りの、長い人生に幕を閉じたのでございます。
市村が「自分の遺産を投じて、世の中の役に立つ仕事のための基金を作りたい」という考えから生まれた、財団法人・新技術開発財団の設立が、時の首相・佐藤栄作によって正式に認可された、僅か4日後の事でございました。

特別ラジオドラマ

市村清の⽣涯を綴ったラジオドラマをお聞きいただけます。

『あけのひ、あっかいとな ~市村清物語~』ディレクターズカット版

2017年3月、市村清の故郷・佐賀県にあるエフエム佐賀が、開局25周年を記念して市村清の生涯を特別ラジオドラマとして放送しました。前編・創世記58分、後編・革新記68分。 声優陣の迫力ある表現と、楽しい脚本による「市村清物語」をお楽しみいただけます。