市村清ギャラリー

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三愛会キャラクター“チビ清”くん、紹介

三愛会キャラクター
“チビ清”くん

画像:チビ清くん

Profole

名前

チビ清(本名:市村 清)

誕生日

4月4日

年令

10歳(小学校4年生)

血液型

A型

出身

佐賀県三養基郡北茂安村
(さがけん みやきぐん きたしげやすむら)

好きなもの

将棋・プロレス・相撲

好きな食べ物

ラーメン、うなぎ、おそば

やんちゃでいたずら大好き。
だけど涙もろくて情に厚いおチビちゃん

みんな、「チビきよ」って呼んでね!
三愛会サイトや三愛会会誌に登場しているので、かわいがってあげてください。

市村清を観る

市村清の姿を動画でご覧いただけます。

※再⽣時に⾳声が流れますので、⾳量にご注意ください。

市村清を聴く

市村清の⾁声をお聞きいただけます。

※再⽣時に⾳声が流れますので、⾳量にご注意ください。

市村清と13人の賢人たち

市村清の人生に大きな影響を与えた人物を紹介するFM佐賀のラジオ番組をお楽しみいただけます。
FM佐賀では2022年1月4日から3月29日までの3か月、約5分間の番組を13回にわたり放送しました。
ここでは音声だけでなく、テキストデータも閲覧できます。

第1回
市村新太郎

放送日2022年1月4日

NA

明治33年...佐賀県の貧しい農家に生まれながら、一代で「リコー三愛グループ」を築き上げた男、市村清。戦前から戦後の激動の時代に深い愛と情熱を持って事業を立ち上げ、成功を収めた市村を支え、影響を与えた賢人たちを紹介します。

再生時間【3:07】

講談師

第一回目の本日は市村清の祖父である新太郎の巻。
場面は祖父・新太郎が最愛の孫・清に与えた牛が、
執達吏(しったつり)、いわゆる国の役人によって連れ去られるところから始まります。

やめて!連れてかんで!やめて!離して!

執達吏

そげんわけにはいかんと!これはお国が決めた事だけん。

一生懸命育てたとだけん!俺の小遣いで育てたとだけん!

執達吏

え~い、離さんか!あきらめちくれ!

じいちゃん!なんとかして!つれていかるっ!うしが、つれていかるっ!

新太郎

清…どがんも、出来んとじゃ...。

やめてーっ!連れていかんでーーーーっ!お願いだけんーーーっ!連れて、いかんでーーーっ!
(その場に泣き崩れる)うわーーーーーーっ!

講談師

貧しかった市村家。その年の税金を納める事が出来ず、
大事に育てていた子牛を、税金のかたとして、とられてくのでございます。

新太郎

清、お前は学校の成績は良かこたるばってん、うちじゃあ、とてもおまえば上の学校に出してやる事はでけんじゃろう。おどんが、一つ、よか方法ば教えちゃろう。お前に雌の子牛ば一頭こうてやる。そっば、自分で、どがんかして育てろ。そしてどんどん牛ば増やして売れ。そん金で中学とかに行くための学費ば稼ぎだそうって算段たい。どがんや?

悔しか...俺は、悔しか!

新太郎

清...だれが悪かわけでんなか...うちが貧乏だけんし方んなかとたい...。

講談師

「納得のいかない限り、権力や金の力に対して徹底的な反抗を試みて譲らないようになったのは、
この出来事があったからかもしれない。」…と市村にいわしめるほど、
この時の出来事は強烈に脳裏に刻まれるのでございます。

講談師

しかし、新太郎との思い出はこんな悲しい事ばかりではございません。
市村清が掲げる「人を愛する」という精神は、幼少期の清に対し絶え間なく注がれ続けた祖父・新太郎の愛情こそが、その土台作りをしていたのでございましょう。

「市村清と13人の賢人たち」。
祖父・新太郎の一席はこのあたりで...読み終わりでございます。

第2回
市村豊吉

放送日2022年1月11日

NA

明治33年...佐賀県の貧しい農家に生まれながら、一代で「リコー三愛グループ」を築き上げた男、市村清。戦前から戦後の激動の時代に深い愛と情熱を持って事業を立ち上げ、成功を収めた市村を支え、影響を与えた賢人たちを紹介します。

再生時間【3:02】

講談師

第二回目の本日は市村清の父・豊吉の巻。
士族の出で読み書きの素養があり、弁の立つ人物ではございましたが、
性格は頑固でわがまま、しかもものぐさで、一言で言うと...変わり者で通っておりました。
場面は豊吉と出かけた蓮池でのウナギ取りから始まります。

さっきから父ちゃんばっかり獲れて、俺のにはいっちょんかからん。

豊吉

清、浮き上がってくる泡ばようみれ。そっが、ウナギのおる所ば教えてくれる。

講談師

そういうと豊吉はかぎ針のついた棒でおもむろに水の底をかき回す。

あ、泡ん出てきた。

豊吉

今ん泡は驚いたウナギが慌てて出す泡たい。
こっでウナギがどっちに行きたかとかわかる...そしたら...よいしょ。

うわぁ~獲れた!すげ~。

講談師

と、持ち前の観察眼と理にかなった方法論で清を感心させたり、
ある時は雀を獲っている清に対し...

豊吉

お前は雀ば獲るとに、雀自体ば狙いよるとか?そっじゃいつまっでん獲れん。

何ば狙えて言うと?

豊吉

羽ばたいて飛ぼうとする雀よりちょっと前のところたい。

はっ!そがん雀から離れとっところで獲れるわけがな...

あっ!獲れた!

豊吉

雀ば獲る時は、そのものを狙ったらいかん。雀の習性や状況ば考えて、
一番タイミングの合ったところ。それが急所たい。

そのものを狙うな...なるほど!

講談師

「目的と一致する方向は、人間の欲望とは離れたところに存在する。」という
市村がのちに考える経営理念は、これら数々の出来事の中で知らず知らずのうちに
父・豊吉から学び取ったものでございましょう。

講談師

後に「アイディアの神様」と称賛される市村清は、
こうした豊吉の資質を受け継いでいたのかもしれません。
豊吉についてはまだまだたくさんの面白い話はございますが、
「市村清と13人の賢人たち」父・豊吉の一席。
今日のところはいったん...読み終わりでございます。

第3回
原口英雄

放送日2022年1月18日

NA

明治33年...佐賀県の貧しい農家に生まれながら、一代で「リコー三愛グループ」を築き上げた男、市村清。戦前から戦後の激動の時代に深い愛と情熱を持って事業を立ち上げ、成功を収めた市村を支え、影響を与えた賢人たちを紹介します。

再生時間【3:03】

講談師

第三回目の本日は市村清の義理の兄・原口英雄の巻。
場面は清が佐賀中学校へ通うため姉のタイの嫁ぎ先、
つまりは原口英雄の実家の居間から始まります。

英雄兄さん、外国人が練兵場で飛行機を飛ばすんだって!
日本で初めての見せ物を5銭で見られるんだからくれませんか?

英雄

清、お前は一体自分がどんな身分だと思っているんだ?

講談師

虫の居所でも悪かったのか、英雄は、居候である清の要求を頑として突っぱねる!
その日の悔しさが忘れられず、夏休みが終わっても原口家には戻らず、
とうとう佐賀中学校も中退するのでございます。

心配になった原口英雄...。

英雄

清、共栄貯金銀行久留米支店に欠員があるんだ。お前働いてみないか?

講談師

と、就職口を紹介したり。

もっと勉強したい!東京行きたい!

講談師

と向学心に燃えた清を、前の年に東京へ移り住んだ自分の家に下宿させたり。

英雄兄さんが新しい銀行設立のために北京に渡った?大陸…大陸か。

講談師

と、自分が大陸に行く事を話し、清の大陸に行きたい熱を掻き立てたり。

もし、あの時英雄兄さんから5銭もらっていたら...もし佐賀中学校をやめていなければ...
もし共栄貯金銀行で働いていなければ...もし東京へ出ていかなかったとしたら...
もし英雄兄さんから大陸の話を聞かなければ...もし...もし...。

講談師

このように市村清の人生において原口英雄という人物の存在は欠かすことが
できないのであります。いや!原口英雄がいなければ皆さんが知っている
市村清は存在しなかったといっても過言じゃありません。

講談師

しかしながら、この原口英雄とのエピソード、のちの著書・文献にはあまり出てこない!
そのわけをお話したいところではありますが、お時間も来たようで、
「市村清と13人の賢人たち」義兄・原口英雄の一席。
今日のところはいったん...読み終わりでございます。

第4回
岡泰雄

放送日2022年1月25日

NA

明治33年...佐賀県の貧しい農家に生まれながら、一代で「リコー三愛グループ」を築き上げた男、市村清。戦前から戦後の激動の時代に深い愛と情熱を持って事業を立ち上げ、成功を収めた市村を支え、影響を与えた賢人たちを紹介します。

再生時間【3:07】

講談師

第四回目の本日は市村清の恩師・岡泰雄の巻。
場面は三養基郡にある千栗(ちりく)八幡の境内から始まります。

岡先生!

ん?

岡先生に質問があります!

なんだ?市村君。

講談師

この、岡泰雄という人物。学歴はなく、独学で教員資格を得て、地元であるみやき町の
小学校などで教鞭をとり、その後各地の中学・高校の教師を務めあげた努力の人。

どうやったら先生みたいな頭のいい人間になれるのでありますか?

ははははは。それはまた難しい質問だなぁ。市村君。君はなぜ頭のいい人間になりたい?

なぜ?...なぜ...分かりません...。

ほう、分からんか?

家は貧乏で...勉強したくてもできなくて...これを変えるためには、勉強して...なんか違うなぁ...。

うん!悩め悩め!そして考えろ!じっくり考えればおのずと自分なりの答えが見つかるはずだ。

先生...よくわからないであります!

分からんか...実を言うとな、市村君。この岡泰雄もその答えは見つけていないんだ。
もしかすると、死ぬ間際に、ああ、これが答えだったのか、と分かるのかもしれない。

はあ。

だから、その答えを見つけるために、たくさんの本を読んでいる。
今も勉強している真っ最中なんだ!ははははは。

清M

これほど頭のいい先生でさえも、今も勉強の真っ最中なんだ...。
驕ることなくまっすぐに学ぶことに向かってる姿勢!これは尊敬に値する!

講談師

独学でもあんなに偉くなれるのだ。自分ももっと本を読まなければ...。
岡泰雄の講義を聞きながら、市村少年はこう心に誓うのでした。

講談師

市村清が本の虫となり、膨大な知識を得て自らを形成し、猛烈なる向学心を携え上京。
ついには中央大学に通うようになるのは、
この岡泰雄との出会いが大きく作用しているのは間違いありません。
この後、恩師岡泰雄との千栗八幡宮にまつわるお話もございますが、
「市村清と13人の賢人たち」努力の恩師・岡泰雄の一席。
今日のところはいったん...読み終わりでございます。

第5回
大恩寺和尚

放送日2022年2月1日

NA

明治33年...佐賀県の貧しい農家に生まれながら、一代で「リコー三愛グループ」を築き上げた男、市村清。戦前から戦後の激動の時代に深い愛と情熱を持って事業を立ち上げ、成功を収めた市村を支え、影響を与えた賢人たちを紹介します。

再生時間【3:19】

講談師

「市村清と13人の賢人たち」。第五回目の本日は、大恩寺和尚と「夜船閑話(やせんかんな)」の巻。
場面は清の東京での下宿先、大恩寺の自分の寝床から始まります。

は~北茂安出身の男が共産思想で警察に捕まったらしい...。

講談師

この頃の市村は、
世の中の不条理、自分の置かれた立場の辛さから共産主義に傾倒しておりました。

その男の母親が半狂乱になっただと...はあっ

講談師

同郷の人間が逮捕された話を聞き、
共産主義が持つ非情な心理と、現実世界の絆との間で大いに悩んでおりました。

和尚

市村さん。おりますかな?

...ん、和尚様ですか?

講談師

仕事も休み、学校へも行かず布団の中で悶々としていた清を見かねて和尚は言います。

和尚

どうしたんじゃ?何か悩んでおるだろう?

そ、それは...。

講談師

「共産思想が...」その言葉を言い淀む市村に対し、大恩寺の和尚が諭しだす。

和尚

市村さん。世の中というものは理屈通りにいくものじゃない。
何事でも一長一短がある。思うようにいかんところが面白いんじゃないのかな。

講談師

その言葉に何も言いえない市村清。

和尚

それよりも、わしが心配しているのは、市村さんの顔色じゃ。
肺病にでもなったらどうする。主義とか思想とかいう前に命がなくなってしまう。

講談師

肺病と聞いて思い当たる節のあった市村が病院へかかると、肺がいくらか冒されている。
医者からは絶対安静を言い渡されるが、ここで出会ったのが
白隠禅師が書いた「夜船閑話(やせんかんな)」。

人間が病魔に冒されるのは病気を怖れるからだ。自分は病気だと思い込んでしまうから、
ますます弱くなり病菌に負けてしまう。病気に勝つためには、まず精神力を旺盛にして
病魔を追い払ってしまう自信を持つことが第一であるだと?…うおーっ!

講談師

「世の中のなんの役にも立たずに、どっちつかずにブラブラしているくらいなら、
一思いに死ぬか、生きるかだ」という考えに行きついた市村は、徹底的に抵抗療法に取り組み、
見事、病からも共産思想の呪縛からも解放されるのでございます。

講談師

この抵抗療法、走り込みと乾布摩擦なのですが、
どんな距離を走ったか...説明したいところではございますが、
大恩寺和尚と「夜船閑話(やせんかんな)」の一席。
今日のところはいったん...読み終わりでございます。

第6回
小出熊吉

放送日2022年2月8日

NA

明治33年...佐賀県の貧しい農家に生まれながら、一代で「リコー三愛グループ」を築き上げた男、市村清。戦前から戦後の激動の時代に深い愛と情熱を持って事業を立ち上げ、成功を収めた市村を支え、影響を与えた賢人たちを紹介します。

再生時間【3:05】

講談師

「市村清と13人の賢人たち」。第六回目の本日は、小出熊吉の巻。
場面は共栄貯金銀行の頭取室から始まります。

小出頭取!今度大陸に新設される日中合弁の銀行に派遣してはいただけませんか?

講談師

時は1922年、市村は思想的に苦しみ、病苦と闘っていた半年余りの生活を正直に語り、
心機一転やり直すために大陸に行きたいと訴えたのでございます。

小出

よろしい。君がそれほど望むなら出してやろう。
今君の義理の兄さんの原口君が向こうで折衝中だが、やがて発足の時期も決まるだろう。
そのつもりでしっかり勉強しておくんだな。

講談師

...と快諾するのであります!ここからの市村の快進撃はまた別の機会にお話しすることとして、
この物語の主人公・小出熊吉には、ある重要なミッションが待っているのでございます!

小出

市村君、私に君の伴侶を世話させてもらいたいのだが。

講談師

大陸で類まれな才能を発揮する市村の姿にすっかりほれ込んだ小出頭取、
ついには良い妻を世話したいと考えるようになりました。

小出

上海の分行の近くで病院を経営している松岡玄雄は知っとるか?
そこに娘が3人おってな?末娘・幸恵さんというのが、
人物・容姿・年齢とも君にうってつけなんだ。どうかね?

講談師

こんな風にさらっと言ってはおりますが、この幸恵なら市村の妻にふさわしいと確信した小出は、
自ら松岡医師を訪ねて頭を下げていたのであります。

私は数年前に肺を患いましたし、お相手の家柄と実家の不釣り合いがありますから...。

小出

そういわず...一度あってみて、ね?何なら、先にお父さんに挨拶を...。

講談師

こうして、紆余曲折はあったものの、無事、幸恵を生涯の伴侶とするのでございました。

講談師

自ら大陸派遣を志願した市村に対し「従来の慣習にとらわれることなく、
積極的に新しい物事へ取り組もうとする気質」いわゆる【進取の気性】を見出した小出熊吉。
「仕事から結婚に至るまで親身になって面倒を見てくれた小出さんへの恩を生涯忘れる事はない」と、
市村清が心に誓ったところで「大恩人・小出熊吉」の一席。
今日のところはいったん...読み終わりでございます。

第7回
野口壮吉

放送日2022年2月15日

NA

明治33年...佐賀県の貧しい農家に生まれながら、一代で「リコー三愛グループ」を築き上げた男、市村清。戦前から戦後の激動の時代に深い愛と情熱を持って事業を立ち上げ、成功を収めた市村を支え、影響を与えた賢人たちを紹介します。

再生時間【3:04】

講談師

「市村清と13人の賢人たち」。
第七回目の本日は、野口壮吉の巻。場面は市村清の実家の縁側から始まります。

壮吉

きよっさん、きよっさんはおるかね?

縁側におります。

講談師

大陸での大東銀行支店長代理という地位から一転、
一介の無職浪人となった市村と妻・幸恵は佐賀の市村の実家に身を寄せておりました。

壮吉

おう、こっちにおったね?

あ、壮吉おじさん、どうしたんです?

壮吉

ああ、今日は、きよっさんに仕事の話ば持ってきた。

講談師

市村が壮吉おじさんと呼んでいるのは、富国徴兵保険株式会社の久留米支部長の野口壮吉。
父・豊吉の弟であります。

ああ、仕事...今はちょっと。この間も長崎の運送会社に口のあったとですが断りました。

壮吉

ああ、聞いとる。きよっさん。一つ、保険の外交ばしてみる気はなかか?

保険の外交...ですか?

壮吉

ああ、世間じゃ、あまり良か仕事に思われとらんが、成功すれば太か仕事たい。

はあ。

壮吉

全額出来高払いの歩合制。契約さえ取れれば、その分、収入も多うなる。

でも...。

壮吉

わかった、腹割って話そう。九州各地に支店のある富国徴兵保険ばってんが、
その中で、熊本が厳しかとたい。熊本という土地には、保険て言う考えが、
どうもなじまんごとある。今じゃ、保険界の不毛の地て言われよる。
お前のその才覚で、この難物ば開拓してくれんだろか?

講談師

「己の才覚でどうにかしてくれ」という言葉が琴線に触れたのか、
年老いた両親や幼い弟たちの暮らしを思ってなのか、
市村は保険の外交をやってみようと決心したのでございます。

講談師

ここから2か月にも渡り辛酸をなめ続ける「保険外交熊本の陣」が始まるわけではございますが、
この、野口壮吉に保険外交を勧めてもらわなければ、契約獲得で全国一の表彰を受けることも、
富国徴兵保険の監督に就く事もなかった訳でございますから、
世の中というものは、わからないものでございます。
このあたり詳しく話したいところではございますが、ちょうどお時間という事で
「導き人・野口壮吉」の一席。今日のところはいったん...読み終わりでございます。

第8回
市村幸恵

放送日2022年2月22日

NA

明治33年...佐賀県の貧しい農家に生まれながら、一代で「リコー三愛グループ」を築き上げた男、市村清。戦前から戦後の激動の時代に深い愛と情熱を持って事業を立ち上げ、成功を収めた市村を支え、影響を与えた賢人たちを紹介します。

再生時間【3:22】

講談師

「市村清と13人の賢人たち」。第八回目の本日は、妻・市村幸恵の巻。場面は昭和2年の年の瀬、12月23日、市村が熊本での保険外交先から家へ帰ってきた所から始まります。

ただ今...。

幸恵

おかえりなさい。

幸恵...もう、保険の募集なんて仕事にはくたびれてしまったよ。

幸恵

...どうしました?

どうも、この仕事は僕の性に会わない...お前にはすまないが、東京へ夜逃げしよう。
...お前もビリヤード屋のゲーム取りでもなんでもしてくれ。俺も、屋台でも何でもやる。

講談師

どんなことがあっても弱音を吐かない清の言葉に、幸恵、返す言葉が見つからない。
あたりには火鉢にかけたヤカンが奏でるシュンシュンという音のみ。

なんとか言ったらどうなんだ。

幸恵

...私は、あなたが行く所なら、東京でもどこでもついてまいります。ゲーム取りだってやります。
けれども、あなたは最初、紹介状もなしに保険の募集ができるかと言われた時、
ずいぶん強気でしたね?それを、保険を一口もとらないでおやめになるつもりですか?

僕の身にもなってくれ!2か月!2か月一口も取れなかったんだぞ?

幸恵

私は、あなたの分身と思っています。あなたがつらい事は、私もつらい。
だからこそ、あなたの、市村清という人間の履歴に、
一つも成果をあげられなかった仕事があるという記録が残るのは、悔しいじゃありませんか。

講談師

市村が幸恵を見ると、目からは涙が今にも溢れ出そうとしている。
それを流すまいとぐっとこらえる幸恵の強さに。

...わかった...そうだな...お前の言う通りだな。
...情けない...市村清とあろう者が情けない!よし!死に物狂いで後八日間やってみよう。

講談師

その筋の通った励ましの言葉に、
市村の中にわずかに残っていた闘志が目を覚ましたのでございます。

幸恵。

幸恵

はい。

ありがとう。

幸恵

はい。

講談師

数ある幸恵とのお話ではございますが、私が一等好きなこのお話、
ぜひ皆さんに聞いていただきたかった!清の陰に幸恵あり!
市村清の成功は妻・幸恵の内助の功を抜きに語ることはできませんが、
ちょうどお時間となりまして「至高の伴侶・市村幸恵」の一席。
今日のところはいったん...読み終わりでございます。

第9回
竹崎八十雄

放送日2022年3月1日

NA

明治33年...佐賀県の貧しい農家に生まれながら、一代で「リコー三愛グループ」を築き上げた男、市村清。戦前から戦後の激動の時代に深い愛と情熱を持って事業を立ち上げ、成功を収めた市村を支え、影響を与えた賢人たちを紹介します。

再生時間【2:52】

講談師

「市村清と13人の賢人たち」。第九回目の本日は、竹崎八十雄の巻。
場面は熊本市大江にある竹崎の家の玄関先から始まります。

すーーーーはーーーー...よしっ!

富国徴兵保険の市村でございます。

講談師

この日最初に訪れたのは私立大江高等女学校の校長をしていた、竹崎八十雄の家。
実に9回目の訪問。

竹崎

やあ、きましたね。あなたが来るのを待っていたところですよ。ささ、なかへ。

はあ...。

竹崎

市村さん、あなたの様なやり方で、保険はとれますかね?

ぶはっ!...なにを...。

竹崎

どうもあなたのやり方は立派すぎる。

立派すぎる...。

竹崎

女中が今日は留守ですと言えば、ああそうですかと言って帰る。
しかも、そういう時は必ず手紙をくださる。

一応、お伺いした事をお知らせしようと思いまして。

竹崎

どうせ勧誘の手紙だと思って開けてもみなかった...。

ああ、ご迷惑でしたか、気付きませんで。

竹崎

いやいや、迷惑などではない。市村清とはどういう人物なんだろうと、家内と話していたんです。

はあ。

竹崎

この前、八度目の手紙をいただいた時、開けて読んでみました。

...え?

竹崎

文章も、字も立派だし、誠意もあふれている。
このような人物なら保険を任せてみてもいいと思ったんです。

...それは...。

竹崎

保険に入りましょう。

...ありがとうございます!ありがとうございます!

講談師

この契約を皮切りに、竹崎が知人を紹介、その知人が、また知人を紹介し
市村の契約高は日を追って上昇していくのでありました。

講談師

前の晩の幸恵の叱咤激励で臨んだ「保険外交熊本の陣」六十九日目の出来事!
「自分は事が成就する一歩手前で思い迷っていた。成功するも失敗するも紙一重。
仕事はあきらめてはいけないのだ」と改めて肝に銘じたところで、丁度時間となりまして、
「地獄の69日間から救った男・竹崎八十雄」の一席、
今日のところはいったん...読み終わりでございます。

第10回
吉村吉郎

放送日2022年3月8日

NA

明治33年...佐賀県の貧しい農家に生まれながら、一代で「リコー三愛グループ」を築き上げた男、市村清。戦前から戦後の激動の時代に深い愛と情熱を持って事業を立ち上げ、成功を収めた市村を支え、影響を与えた賢人たちを紹介します。

再生時間【3:01】

講談師

「市村清と13人の賢人たち」。第十回目の本日は、吉村吉郎の巻。
場面は吉村商会の応接室から始まります。

吉村

市村さん、保険をやめて、理研の感光紙を売ってみませんか?

理研...理研というと、理化学研究所の...。

講談師

この吉村吉郎という男、ご存知、佐星醤油の初代であり、富国徴兵保険や味の素、
理研感光紙の総代理店などを兼業していたやり手の実業家でありました。

吉村

ええ、今、雇ってる外交員!これが使い物にならんのです。

その外交員の代わりをしろと?

吉村

いえ、市村さんには、理研感光紙総代理店の看板を、そっくり買っていただきたい。

ええっ?

吉村

悪い話じゃないですよ。あなたの手にかかれば、きっとうまくいく。
収入も、今の倍以上は見込めますよ?どうです?

講談師

この吉村という男、資産家ではあるが噂では、ものすごい倹約家らしい。うまい話には裏がある。

ちょっと…考えさせてください。

講談師

と、すぐに返事はしなかったのでございます。
それから数日がたったある日、吉村の家に養子として入った勉青年が市村のもとを訪れて。

市村さん。この間、おやじが感光紙の話をしてたでしょう?
あれ、実は、おやじは、あの仕事がうまくいかないから焦ってるんですよ。

焦っている?

ええ。近く理研との契約期間が満期になるんですが、
今の売り上げじゃ解約になるかもしれないんです。

うん。

しかも、次の総代理店候補に内定してる人までいるんですよ。

うんうん。

外交員がだめだと言ってたでしょう?
あれは、親父がけちだから、定まった外交員がいつかないんですよ。

うんうんうん...。

今あなたが権利を譲れと言えば、破格の値段で譲ってくれるはずです。

なるほど...よーし!これは千載一遇のチャンス到来だ!

講談師

最初、吉村が提示した譲渡金一万円を大きく下回る、
二千円という金額で理研感光紙九州総代理店の権利をつかみ取ったのでございます。

講談師

この理研感光紙九州総代理店の権利獲得には、もう一つ、
理研本社の了解を取り付けるという難題を乗り越える大冒険活劇もございますが、
今日のところはいったん...読み終わりでございます。

第11回
大河内正敏

放送日2022年3月15日

NA

明治33年...佐賀県の貧しい農家に生まれながら、一代で「リコー三愛グループ」を築き上げた男、市村清。戦前から戦後の激動の時代に深い愛と情熱を持って事業を立ち上げ、成功を収めた市村を支え、影響を与えた賢人たちを紹介します。

再生時間【3:07】

講談師

「市村清と13人の賢人たち。第十一回目の本日は、大河内正敏の巻。
場面は理化学研究所の総裁の部屋から始まります。

大河内

本社に来て、販売面の仕事をやってみんかね?

私がですか?御冗談を。

大河内

冗談?きみは、理化学研究所総裁である、このわしが、冗談でこういう事を言う男にみえるかね?

講談師

この大河内正敏という人物、最盛期には傘下企業60数社を数える理研コンツェルンを形成した、
まさに理研の黄金期を作り上げた立役者でございます。

しかし...。

講談師

この大河内からの誘いを昔なじみの弁護士田中虎三郎に相談すると。

田中

君はもともと感激性が強くて一本気な男だ。大河内さんも殿様出の人だから、
なんでも我を通す我儘なところがあるだろう。いつか衝突する危険がある。

講談師

と、指摘され一旦は退くのでございますが、
事実は小説より奇なり‼そこで引き下がるような大河内正敏ではないから面白い!

大河内

ふっ...わしが見込んだだけのことはある。
わかった。現在やっている代理店の経営はそのまま続けてもよい。

え?

大河内

本社では、感光紙部長とする。

そ、そのような厚遇...。

大河内

成績が上がれば、将来経営陣にも加える…どうだ、これ以上欲しいものがあるかね?

うおーーーー私は、今、猛烈に感動しております!
「士は己を知る者のために死す」という言葉があります!
大河内先生の、身に余る処遇にこたえるべく、
私、市村清、東京へ上り、大河内先生に一生を捧げる決意をいたしました!

講談師

こうして、昭和八年の春。理研コンツェルンの大河内総裁からの招聘を受け、
市村は、上京してゆくのでございます。

講談師

その後、田中虎三郎の予言通り大河内と市村は大げんかの末仲たがいをするのでございますが、
戦後の財閥解体の折、市村の事業が対象から外れたのは、大河内の賢明な判断で、
すでに理研傘下から離脱させられていたからという、涙々の師弟のお話はございますが、
丁度時間となりまして、「良き先輩であり、理解者であり、大恩人・大河内正敏」の一席、
今日のところはいったん...読み終わりでございます。

第12回
柳川平助

放送日2022年3月22日

NA

明治33年...佐賀県の貧しい農家に生まれながら、一代で「リコー三愛グループ」を築き上げた男、市村清。戦前から戦後の激動の時代に深い愛と情熱を持って事業を立ち上げ、成功を収めた市村を支え、影響を与えた賢人たちを紹介します。

再生時間【2:54】

講談師

「市村清と13人の賢人たち」。第十二回目の本日は、柳川平助の巻。
場面は市村が柳川にとある相談をするところから始まります。

柳川さん...私はどうも実業家には向かないようです。
私のような理屈っぽく我が強い人間には弁護士や判事が向いてるといわれました。

柳川

そうか...。

講談師

この柳川平助という男、かの杭州湾上陸作戦を成功させた人物。非常に哲学人的な要素を
もっており、軍人でありながら司法大臣を務めたこともある同郷の先輩であります。

将軍はどう思われますか?

柳川

君はコンペイ糖のような男なんだ。

金平糖...ですか?

柳川

そう。コンペイ糖に角がたくさんあるように、君には角、つまり欠点が多すぎる。
世間の人は、その角をすり減らして丸くなれと言っているんだろうが、それはいかん。

なぜですか?

柳川

コンペイ糖の角をなくしたら、ただの玉になってしまう。
人間で言うなら「無個性のスケールの小さな人間」だ。君はそうなりたいのかね?

なりたくありません。

柳川

人間というものは、正しく真心を持って進んでいけば、
多少は孤立しても、すべてを葬られることなど絶対にないものだ。

はあ。

柳川

欠点を直すことより、むしろ長所を伸ばすことに力を注いでいけば、自然と角が取れて
丸くなっていく。その時は、同じ円満な人間でも人物のスケールが違うよ。

なるほど!

柳川

僕は、今はまだ「角のたくさんある君」に期待している。
無理に角をすり減らして小さく生きるより、思い切ってそのままの生き方でおやりなさい。

講談師

そう説く柳川の言葉に、市村は迷いを捨てて
実業家として生きていく決意を新たにしたのでございます。

講談師

後に、この柳川平助に「君は世界で一番偉い実業家は誰だと思いなさるかね?」と問われた
「事業の本質は、世のため人のために尽くすということにある!」という非常に面白いお話も
ございますが、市村清と13人の賢人たち「素晴らしき助言者・柳川平助」の一席、
今日のところはいったん...読み終わりでございます。

第13回
村山長一

放送日2022年3月29日

NA

明治33年...佐賀県の貧しい農家に生まれながら、一代で「リコー三愛グループ」を築き上げた男、市村清。戦前から戦後の激動の時代に深い愛と情熱を持って事業を立ち上げ、成功を収めた市村を支え、影響を与えた賢人たちを紹介します。

再生時間【3:05】

講談師

「市村清と13人の賢人たち」。第十三回目の本日は、村山長一の巻。
場面は昭和43年、市村が村山の病院を訪れたところから始まります。

村山君、僕はどうもこの頃体がしんどうてかなわん。よく見てくれよ。

村山

どれどれ...。

講談師

この村山長一という男、市村とは旧制佐賀中学校からの同級生。
今では市村の主治医をしております。

村山

これは...。

講談師

肝臓のあたりに硬いしこりがあることに気づき、嫌な予感がする村山医師。

村山

なあに、前回もただの潰瘍だったじゃないか。今回も、きっと...。

講談師

しかし、この時すでに、市村の体はがんに侵されていて、
余命数か月の宣告を市村の妻である幸恵にしなければならないのでした。

村山

市村、待ったぞ。

すまん。いろいろあってね。遅くなってしまった。

村山

なあに、来てくれりゃいいんだ、来てくれりゃあ...しかしどんなに待ったか。さあ、病室へ。

君には昔っから世話になってばかりだ。
佐賀中学校を中途退学した僕を、同窓会に迎え入れてくれた。

村山

あたりまえじゃないか。

リコーの様子がおかしかった時も、村山君たちに大いにお世話になった。

村山

何昔ばなしなんてしてるんだ。これじゃあ、まるで...。

そして...最後も...。

村山

...市村。

講談師

「もう2度と三愛の会報誌に「全快のお知らせ」を書くことはないのだ。」
病室へ向かう市村の背中をじっと眺めながら、親友として、主治医として、
何もしてやれることがないことを、ひどく悔やむ村山医師でありました。

講談師

村山医師は、率直な性格の市村が多くの人から愛されていた反面、
その性格ゆえに政財界のみならず郷里にさえ敵をつくっていたことを知っておりました。
時には、親友として苦言を呈したこともありました。
村山医師は市村清の大親友であり最大の理解者だったのでございましょう。
さて、13回にわたってお送りしてまいりました「市村清と13人の賢人たち」。
本日この時間を持ちましていったん...読み終わりでございます。

市村清からのメッセージ ~いま心に刻む13の言葉~

市村清が残した名言・金言を紹介するエフエム佐賀のラジオ番組をお楽しみいただけます。
エフエム佐賀では2021年1月5日から3月30日までの3か月間、約5分間の番組を13回にわたり放送しました。
ここでは放送時の音声だけでなく、テキストデータも閲覧できます。

第1回
「そのものを狙うな」

放送日2021年1月5日

タイトルコール

明治33年...佐賀県の貧農の家に生まれながら、戦前から戦後の激動の時代に、一代で「リコー三愛グループ」を築き上げた男、市村清。起業の神様、アイデア社長と言われた彼が遺した...いま心に刻みたい市村清からのメッセージを紹介いたします。

再生時間【3:40】
今回のことば
「そのものを狙うな」

ナレーション

明治33年4月4日。日本から遠く離れたフランスで、「パリ万国博覧会」がまさに開かれようとしていたこの日。佐賀県三養基郡北茂安村(きたしげやすむら)で市村清は生まれました。家は貧しい農家で、決して楽な生活ではありませんでしたが、この佐賀の大自然の恩恵の中で伸び伸びと育っていったのでございます。

(藁の上をゆっくり静かに歩みを進める音)

動くなよ…そう…そんまま…じっとしとけよ…えいっ!

(雀の羽ばたく音)

あっ!…くそぅ…。

父・豊吉

(遠くで)あはははは!清ぃ、まぁ~た逃げられたとか!こいじゃあ、雀ば獲りたかとか、逃がしたかとか分からんぞ?

くぅぅぅぅぅぅ。

ナレーション

父親である豊吉は鍋島藩の士族の出で、明治の初めにこの市村家に養子として入ってきました。身長176センチ体重94キロ。当時の人の中では、ずいぶんと大柄でした。士族の出らしく読み書きの素養もあり、弁も立つ方ではございましたが、性格はといいますと、ひどくものぐさでわがまま。一口で申しますと「変わり者」で通っておりました。

今度こそ…そーっと…あっ!(雀の羽ばたく音)また逃げられた…。

父・豊吉

どこば狙いよっとや?

うわっ!びっくりした!急に後ろに立つなて!

父・豊吉

なんば取りたかとや?

な、なんばて、雀に決まっとう。

父・豊吉

お前は雀ば獲るとに、雀自体ば狙いよるとか?

清(モノローグ)

はあ?ま~たおかしかことば言い始めた、こん、ふうけもんの親父は。

雀ば獲るとに雀ば狙わんで何ば狙えて言うとね?

父・豊吉

ちょっと、そんトリモチの棒ば貸してみ…よかか、清。雀はどっちに飛ぶとや?

そら、前に決まっとる。

父・豊吉

雀が一番大きくなるとはいつや?

そら、羽ば広げた時に決まっとる。

父・豊吉

なら、狙うとこはここやろが。

はっ!雀からそげん3センチも4センチも離れとって獲れるわけがな…。

(雀が羽ばたいた瞬間、トリモチに引っかかる)

あっ!獲れた!

父・豊吉

雀ば獲る時は、そのものを狙ったらでけん。雀の習性や状況ば考えて、一番タイミングの合った点。そいが急所ばい。

そのものを狙うな…。

ナレーション

目的と一致する方向は、人間の欲望とは離れたところに存在する。まともな農家仕事は一切やらず、勝手気ままな生活を送っているように見える父・豊吉。しかし、市村はこの父から、資質の上だけでなく、処世の心構えについても随分、多くのものを学んでいくのでございます。それは、市村の人生にも、その後起こすことになる事業経営にも、大きな糧となっていくのでございます。

第2回
「会社が伸びようとするには、結局、従業員が心から協力してくれるかどうかにかかっている」

放送日2021年1月12日

タイトルコール

明治33年...佐賀県の貧農の家に生まれながら、戦前から戦後の激動の時代に、一代で「リコー三愛グループ」を築き上げた男、市村清。起業の神様、アイデア社長と言われた彼が遺した...いま心に刻みたい市村清からのメッセージを紹介いたします。

再生時間【3:39】
今回のことば
会社が伸びようとするには、結局、従業員が心から協力してくれるかどうかにかかっている

ナレーション

昭和4年。隣国ソビエト連邦ではスターリンの独裁体制が完成したころ。それまでやっていた生命保険の代理店業務をやめ、当時大企業であった「理化学研究所」との結び目となる「理研感光紙九州総代理店」の看板を手に入れた市村清。はじめは福岡市の郊外にある小さな店舗でございました。市村、29歳の春のことでございます。

よ~し!これで俺も一国一城の主!働いて働いて働くぞ~っ!

ナレーション

とは申しましても、従業員は市村と私の二人だけ。主人は店主兼販売員。妻である私は女中兼事務員。市村は自分で外交もやれば、荷造り・配達も全部こなす。その傍ら、店の改装、印刷物の制作、電話の架設と自分が初めて得た城を、確実に堅固なものにしていったのでございます。そのかいあってか…。

井上

市村さん!わたくし、あなたの、ファンなんでございますよ~!

ナレーション

と、熱烈に私共を応援してくださる方もいらっしゃいました。

井上

私は、あなたのような働き手は見たことがありません!

ありがとうございます。

井上

市村さん、よかったら私の持っている家を使っちゃくれませんか?

はあ…。

井上

いやいや、敷金なんかいりませんよ!失礼ですけど、いまの…春吉ですか?
あそこではぁ何かと不便ではありませんか?

でも、そんな…(ここからしばらく井上と清の問答。フェードアウト。)

ナレーション

こうして、市村の活躍により3年後には、福岡の天神のど真ん中に店舗を構えることができるようになったのでございます。

(街がや)

幸恵、この2階建ての洋館が、新しい理研感光紙 九州総代理店事務所だ。

妻・幸恵

ずいぶん立派になりましたねえ。

仕事も軌道に乗ってきた事だし、新しく、3人の店員を雇うことにした。

妻・幸恵

小僧さんを?

身分は小僧かもしれんが、店員を呼ぶときは、必ず何々君と君付けで呼びなさい。
この先、この会社を、もっともっと大きくするためには、働き手が「心から協力してくれること」が肝心だ。働き手は、ただの使用人じゃないっ!
事業の協力者であるということを肝に銘じておいてくれ。

妻・幸恵

はい。

従業員の月給は、相場の6割増しの8円!

妻・幸恵

はい!

三度の飯も、仕事の時間も、すべて僕たちと同じ!

妻・幸恵

はい!

社員は、家族だと思ってくれ!

妻・幸恵

我が子の様に、大切にしますわ。

頼んだぞ!

妻・幸恵

はいっ!

ナレーション

この新しい拠点を得て、市村の仕事に対する意欲と研鑽が、いよいよ高まっていくことは、それはまた、別の話でございます。

第3回
損得を忘れてしたことが、意外な好結果になることもある。

放送日2021年1月19日

タイトルコール

明治33年...佐賀県の貧農の家に生まれながら、
戦前から戦後の激動の時代に、一代で「リコー三愛グループ」を築き上げた男、市村清。
起業の神様、アイデア社長と言われた彼が遺した...
いま心に刻みたい市村清からのメッセージを紹介いたします。

再生時間【3:35】
今回のことば
損得を忘れてしたことが、意外な好結果になることもある。

ナレーション

昭和6年。中国・奉天(ほうてん)の郊外、柳条湖(りゅうじょうこ)で、関東軍により南満州鉄道の線路が爆破され、満州事変の発端となる事件が起きたこの年。大牟田の三井三池製作所の中川原という部長の計らいで、理研の感光紙を試験的に使ってみようということになったのでございます。しかし、中川原部長が出してきた案は、従来、小さい筒の中にアンモニアと感光紙を入れ使うものを、大きなドラム缶で一度に100枚くらい現像ができるもの作れ!という無理難題だったのでございます。

社員

社長?なに悩んでるんですか?社長?社長?(しばらく呼びかける社員。それの上に)

清(モノローグ)

鉄工所に特注品を頼むとして、18円でできる。福岡から大牟田までの鉄道運賃が特別小口で2円だから、22円で見積れば2円の儲けか…。

よしっ!

社員

びっくりした!

(鉄工所の様子)

そんな、約束が違うじゃないですか!

鉄工所社長

そういわれてもね…うちも市村さんとこの仕事だけじゃないんでね。

わかりました20円…20円出すんで、何とかうちのを最優先してもらえませんか?

鉄工所社長

まあ…そこまで言うんなら…ねえ。

清(モノローグ)

よし、これで何とか納期までには出来上がる…しかし、鉄道で運ぶと3日かかる。トラックで運ぶしかないが、トラックでの運び賃が18円。それでは丸損だ…どうする?どうやる?何か策はないのか!

(トラックの音)

上条君!三井三池製作所まであとどれくらいだ?

社員

地図では、もう少しのはずなんですが…。

間に合え…間に合え…間に合えーーーーっ!

(昼 安物のブザー音 人のざわめき 車のブレーキ)

間に合った!

中川原

市村君(少し遠め。右後ろ)

あ、中川原部長!(トラックのドアを閉めながら)

中川原

自分で運んできたのかね?

はいっ!

中川原

その機械はいくらした?

すったもんだありまして、ここまでの運び賃も加えると38円かかりました。

中川原

それでは16円も損しているじゃないか?

損や得なんか考えていられません!今日が期限だったので、何が何でも今日届けなければと思って持ってきました。

中川原

そんなに汗だくになってまで…ふぅ…あなたという人がどんな人か、よくわかりました…あそこの水道で顔を洗ってらっしゃい。

はいっ!

ナレーション

この後、市村は三井三池製作所の受注を一手に引き受ける事となるのでございます。自己の収益にこだわり損得勘定に走るよりも、無駄も多いかもしれないが、損得を忘れてしたことが、意外な好結果につながる事もあるということを、市村は、悟ったのでございました。

第4回
どんな小さい顧客にも誠心誠意を尽くすことだ。
相手の立場をのみ込んでやれば、相手はきっと君たちのセールスマンになってくれる。

放送日2021年1月26日

タイトルコール

明治33年...佐賀県の貧農の家に生まれながら、
戦前から戦後の激動の時代に、一代で「リコー三愛グループ」を築き上げた男、市村清。
起業の神様、アイデア社長と言われた彼が遺した...
いま心に刻みたい市村清からのメッセージを紹介いたします。

再生時間【3:30】
今回のことば
どんな小さい顧客にも誠心誠意を尽くすことだ。
相手の立場をのみ込んでやれば、相手はきっと君たちのセールスマンになってくれる。

ナレーション

昭和7年。時の首相・犬養毅が暗殺される、いわゆる「5・15事件」が起きるこの年。
ある日、天神町にある会社から4キロ以上も離れたお客様から、感光紙を一本、いますぐ持ってこいという注文がございました。1本というのは80センチの10メートル巻きで、当時の売り値が80銭、たかの知れた注文でございます。
気の進まなそうな顔をする店員に、すぐ行くようにと、市村は言うのでした。

店員

社長、ほかに大口の仕事があるんですが…。

たった80銭の注文をした客は小さいだけに扱いは大切にしないといけない。すぐ行ってくれ。

店員

はあ…。

ナレーション

ところが、店員が出かけると間もなく、またそのお客様から電話がかかってきたのでございます。

客(電話)

すまん、市村さん!現像に使うアンモニアをうっかり注文し忘れた。
45銭ぐらいだろうが、それも1本ついでに持ってきてくれないか?

はあ…。

ナレーション

周りを見回しても誰もいない。

仕方がない。

ナレーション

そういうと、市村は自電車の荷台にアンモニアの瓶1本を括り付けたのでございます。

(セミの鳴き声。自転車をこぐ音)

今日はまた一段と熱いなぁ…いかんいかん!これも仕事これも仕事。

店員

(遠くから)あれ、社長!(ブレーキ)

おう!ご苦労さん!

店員

どっかへ配達ですか?

いや、なに、いま君の行ってきた家へ行くんだ。
アンモニアを注文し忘れていたというから持って行くところさ。

店員

なんだよあのおやじ!随分身勝手だなあ。

こら!そんなことを言うもんじゃない!。これが商売というものなんだよ。

店員

そういうもんですかねえ?

そういうもんなんだ。気をつけて帰るんだぞ。

店員

へい。社長もお気をつけて~。

(引き戸の音)

ごめんください!アンモニアをお届けに参りました~。

お客

あ!これは社長自ら!それもこんな熱いさなかに!まことにかたじけない!
ささ、こっちへ来て冷たい麦茶でも!

ナレーション

それからというもの、そのお客様は市村のことをすこぶる気に入った様子で…。

お客

もう、あたしは、がぜん、市村さんとこの感光紙だね!実に気持ちがいい男なんだよ!
どうせ買わなくちゃいけないもんだろ?だったら気持ちのいい男から買ったほうが、こっちも気持ちが良くなるってもんだよ。

ナレーション

(途中からオーバーラップして)と、行く先々で市村のことを宣伝してくれるのでございます。

そうか…こういうことなんだな…。

ナレーション

どんな小さい顧客にも誠心誠意を尽くすこと。
相手の立場を飲み込んでやれば、その相手はきっと自分のセールスマンになってくれる。
市村の、セールスマンとしてのモットーが確立されたのでございます。

第5回
人間は何もないところでも、工夫によっては何でもできる。

放送日2021年2月2日

タイトルコール

明治33年...佐賀県の貧しい農家に生まれながら、
戦前から戦後の激動の時代に、一代で「リコー三愛グループ」を築き上げた男、市村清。
起業の神様、アイデア社長と言われた彼が遺した...
いま心に刻みたい市村清からのメッセージを紹介いたします。

再生時間【3:34】
今回のことば
人間は何もないところでも、工夫によっては何でもできる。

ナレーション

第一次世界大戦によって膨張しきった日本経済界が、いよいよ破綻の兆しを見せ始めた昭和2年4月。上海領事館司法部からの「いわれなき横領」の罪で逮捕された市村は、すっかり腹を固めて、監房の中での読書三昧の日々を送っていたのでございます。

監房仲間1

先生…先生。

ん?どうした?

監房仲間1

市村先生。こう退屈じゃかなわねえ、なんか退屈しのぎになるようなことありませんかねえ?

君たちも本を読んだらいいじゃないか。

監房仲間2

いやいやいや、あっしたちは、その本なんてもの読むくらいなら寝てたほうがいいんです。
めんどくさい。

監房仲間1

もっと手軽なやつありませんかね?

手軽なやつって…君たちは娑婆にいるときは何して暇をつぶしてたんだい?

監房仲間2

もっぱら、将棋ばかりを打っておりやした。

将棋ったって、この監房の中には盤もなければ駒もない。
看守に頼んでも差し入れちゃくれないだろう?

監房仲間1

だから何かありませんかって聞いてるんじゃないですか。

ふむ。まあ、ないから諦めろというのは、僕の性に合わん。
ちょっと考えてみるから待っていたまえ。

幸恵M

そういうと市村は、それまで読んでいた本を伏せて、何もない監房の中を見回してみたのでございます。

何もない…何もない…何もないところから何かを生み出す…どうする…どうする…
どうやれば…ん?…あれは何だ?あの、天井の角にあるやつ。

監房仲間2

角?ああ、あれは近くの煙突から降ってきたすすが、風の塩梅かなんかであそこに溜まってるんじゃないですかい?

すす…すみ?…盤…はっ!枕!…駒は?…芯…

監房仲間1

先生…どうなさったんで?

はい!きた!どーん!

監房仲間

しーしーしー!

ちょっと集まってくれたまえ。

監房仲間

ヘイ…。

これからは、あのように集まったすすや飛んできたすすを一か所に集めておいてくれたまえ。
ある程度集まったら、それを水に溶いて墨汁にする。それで将棋盤と駒を作る!

監房仲間2

将棋盤っつったって、そんな木、用意できませんよ?

それは4人の木枕をこう四角に…合わせて…ほら!

監房仲間1

将棋盤だ!

監房仲間2

駒はどうやって作るんです?

トイレットペーパーの芯を使う!
芯がたまってきたら、週に一度の爪切りの時に駒の形に切り出そう!

監房仲間

なるほどお!

ナレーション

何もないところから何かを考え出す興味。
与えられた条件の中で最高のアイデアを探し出す面白さ。
後年「アイデア社長」の異名をとった市村の片鱗を見せる出来事だったのでございます。

第6回
仕事はあきらめてはいけない。最後の一押しが成否を決めるのだ。

放送日2021年2月9日

タイトルコール

明治33年...佐賀県の貧しい農家に生まれながら、
戦前から戦後の激動の時代に、一代で「リコー三愛グループ」を築き上げた男、市村清。
起業の神様、アイデア社長と言われた彼が遺した...
いま心に刻みたい市村清からのメッセージを紹介いたします。

再生時間【3:31】
今回のことば
仕事はあきらめてはいけない。最後の一押しが成否を決めるのだ。

妻・幸恵(ナレーション)

昭和3年。上海での150日にも及ぶ監房生活ののち、市村と私は、日本へ戻ってまいりました。あっという間に無職に転落してしまった市村は保険外交員として熊本の地に降り立ったのでございます。

すーーーーはーーーー…よしっ!

妻・幸恵(ナレーション)

意気揚々と取り組んだ保険外交員の仕事だったのでございますが、そううまくはいかず、実に2か月もの間、ただの1件さえも契約までたどり着けなかったのでございます。

富国徴兵保険の市村でございます。

妻・幸恵(ナレーション)

市村が、この日最初に訪れたのは、これまでに8度訪れ、その度に会ってももらえなかった、私立大江高等女学校の校長をしていた、竹崎八十雄様の家でございました。

竹崎

やあ、きましたね。あなたが来るのを待っていたところですよ。ささ、中へ。

妻・幸恵(ナレーション)

しかし、この日に限っていきなり客間に案内されたのでございます。

竹崎

市村さん、あなたの様なやり方で、保険はとれますかね?

…なにを…。

竹崎

ははは、失礼。気になったもんですから…。

実は、まだ一件もとれていないのです。

竹崎

そうでしょう。どうもあなたのやり方は立派すぎる。

立派すぎる…。

竹崎

女中が今日は留守ですと言えば、ああそうですかと言って帰る。
しかも、あなたは帰ると必ず手紙をくださる。

一応、お伺いした事をお知らせしようと思いまして。

竹崎

どうせ勧誘の手紙だと思って、開けても見なかったのですが、それが、5回、6回と重なるとやはり気になってしまう。

ああ、ご迷惑でしたか、気付きませんで。

竹崎

いやいや、迷惑などではない。
現に、あなたはどういう人なんだろうと、家内とのはなしの種になっていたのです。

はあ。

竹崎

この前、8度目の手紙をいただいた時、開けて読んでみました。

…え?

竹崎

文章も、字も立派だし、誠意もあふれている。
このような人なら保険を任せてみてもいいと思ったんです。

…それは…。

竹崎

保険に入りましょう。今度あなたが来たら入ろうと決めていたんです。

…ありがとうございます!ありがとうございます!

清(モノローグ)

仕事は絶対にあきらめてはいけない!最後の一押しが事の成否を決めるんだ!

妻・幸恵(ナレーション)

市村が熊本にやってきて69日目の出来事でございました。
奇しくも、市村がこの保険外交という仕事を投げ出そうとして、わたくしが「あきらめないでください」と諫めた次の日のことでございました。

第7回
人生いかなる面においても創意工夫というものがいかに貴く大切であるか。

放送日2021年2月16日

タイトルコール

明治33年...佐賀県の貧しい農家に生まれながら、
戦前から戦後の激動の時代に、一代で「リコー三愛グループ」を築き上げた男、市村清。
起業の神様、アイデア社長と言われた彼が遺した...
いま心に刻みたい市村清からのメッセージを紹介いたします。

再生時間【3:38】
今回のことば
人生いかなる面においても創意工夫というものがいかに貴く大切であるか。

ナレーション

昭和3年。市村が富国徴兵保険の保険外交員として臨んだ「保険外交熊本の陣」が69日目にしてようやく終わりを告げ、その契約を皮切りに契約高は日を持って上昇していったのでございますが、熊本での生活は、まだまだ貧しいものでございました。

魚屋

今日はヒラメにカンパチ、鯛!生きのいいのが入ってるよ~。

妻・幸恵

あのう…。

魚屋

へいらっしゃい!何にしましょう?

妻・幸恵

えーっと…。

魚屋

どうです?今日は景気づけにドカーンと鯛なんて!

妻・幸恵

イワシ…いただけますか?

魚屋

またですか?奥さんとこ、ここんとこず~っとイワシじゃないですか。
ほら!これなんてどうです?有明海でとれた新鮮なイカ!
ほら、透き通っちゃって向こうが見えるくらいに、ねえ。

妻・幸恵

イワシ…ください。

魚屋

なんだよ、世知辛いねえ。たまにはいいもん食わしてやんないと、旦那さんに愛想つかされちゃうよ、はいこれ、イワシ。

妻・幸恵

ええ…でもイワシが食べたくて…。

魚屋

(他のお客さんに)あ!奥さん!見てくださいよこのカンパチ!
出世魚だから縁起がいいよ!

妻・幸恵

はあ…。
と言われたのが一週間前。それがあんまり悔しかったもんですから、それから毎日イワシしか買わなかったんです。もう、毎日イワシ!

ふ~ん…え?でも、毎日イワシだったかな、晩飯。

妻・幸恵

そこですよ!魚屋さんには馬鹿にされたイワシですけど、そのイワシをいかにして馬鹿にされないようにするか!

お、おお。

妻・幸恵

わたくし、考えに考えました。もう、寝ても覚めてもイワシのことしか考えてません!

それはそれで、ちょっと…。

妻・幸恵

覚えてらっしゃいます?どんなイワシが出てきたか?

えっと…。

妻・幸恵

1日目が焼き魚、2日目が煮つけ、3日目が天ぷら、4日目ここが苦しかったつみれ汁!5日目梅肉挟み焼、6日目白みそ焼き、そして今夜が、ででん!イワシの糠炊き!

す、すばらしい。

妻・幸恵

でもね、思ったんです。こんなことがあったからこそイワシ料理の工夫ができた、ひいては、料理というもののコツを得られたんじゃないかなあって。

幸恵…そうだな、人生いかなる面においても、創意工夫が、いかに貴く大切であるか。
無理だと思えることも、それを懸命に究明すれば、道は開けるし、いかなる困難にめぐり会おうとも、決して恐れひるむべきではない、ということだな。

妻・幸恵

それでね、感謝の言葉を伝えに行ったんです、魚屋さんに。そしたらえらく褒められて、ほら、こんなにいただいちゃいました、イワシ。明日からまたイワシ三昧ですよ~

お、おお…たのしみだなぁ~…うん…。

ナレーション

「至難不可能と見ゆることも、これを懸命に究明するとき、道は豁然と開ける」
市村は、この日の出来事を楽しそうにこう語ったのでございます。

第8回
アイデアを出そうと思えば、何から何まで絶えず関心を持ち続けることが最大の効果を上げる根本だ。

放送日2021年2月23日

タイトルコール

明治33年...佐賀県の貧しい農家に生まれながら、
戦前から戦後の激動の時代に、一代で「リコー三愛グループ」を築き上げた男、市村清。
起業の神様、アイデア社長と言われた彼が遺した...
いま心に刻みたい市村清からのメッセージを紹介いたします。

再生時間【3:45】
今回のことば
アイデアを出そうと思えば、何から何まで絶えず関心を持ち続けることが最大の効果を上げる根本だ。

ナレーション

昭和20年代。この時期は市村にとって追風(おいて)に帆を揚げる時代でございました。明治神宮の再建、羽田空港においての三愛石油のハイドランドシステムによる給油、銀座の街を救うために作られた「西銀座デパート」の開店など、「アイデア社長」と呼ばれるまでの活躍を見せたのでございます。

運転手

市村社長。西銀座デパートの開店おめでとうございます。一体どうやったら、あんなふうに、次から次にアイデアが出てくるもんなんですかねぇ。

そんな簡単に、ポンポン出てくるわけじゃないんだよ。

運転手

何か、コツみたいなものがあるんですか?

コツ…コツねえ…考えたこともなかったな…。まず、僕は、アイデアを生み出すために、そのものを否定することから始めるね。

運転手

否定…ですか?

そう。このままでいいと思ったら何も出てこない。そして、その次には、何を見ても「なぜ」という疑問を持ち、疑問を持ったら必ずそれを追究する。疑問を持ってもそのままにすれば、何も生まれてこない。追究することが大切なんだ。

運転手

「疑問」をもって「追求」する…なるほど。

珍しいと思ったことにすぐ疑問を持って、またそれをどんどん追究していくと新発見が次々と生まれてくる。そういうふうにしていくと、世の中にアイデアのタネはいくらでもあると、私は考えるんだが、君はどう思う?

運転手

え?いや、私みたいなもんには。

(笑)それはそうだ。実のところ僕も四六時中考えてるわけじゃない。今君に問われて自分で話しながら「ああ、私はこんな考えの持ち主だったんだ」と再確認しているところだよ。貴重な経験をさせてくれてありがとう。

運転手

いやいや、そんな風に言われたら、わたくし困ってしまいます…私みたいな凡人は…。

でも、大発明や大発見なんてのは、その道の専門家によってなされることは非常に少ないんじゃないかな?

運転手

と、いいますと?

例えば大きな板ガラスの製法はどこが開発したと思うかね?

運転手

板ガラス…なら、ガラス屋さんでは?

アメリカのフォード社だよ。

運転手

フォード社?あの、自動車を作る会社の?

そう。ガラスなんてフォードには全く専門外のことであるにもかかわらず、だ。だから君も、何事にも興味を持ち、それを追求していけば、何か大発見をするかもしれないよ。

運転手

そんなもんなんですかねえ?

そんなもんだよ。エジソンなんて、学者でもない全くのシロウトだが、あれだけの発明をやったんだから。

ナレーション

アイデアを出そうと思えば、何から何まで絶えず関心を持ち続けることが、最大の効果を上げる根本だ。この信念が市村の心の中に絶えず響いているのでございます。

第9回
もし成功に秘訣があるとすれば、他人の立場を理解し、他人の立場から物事を見る能力を持つことだ。

放送日2021年3月2日

タイトルコール

明治33年...佐賀県の貧しい農家に生まれながら、
戦前から戦後の激動の時代に、一代で「リコー三愛グループ」を築き上げた男、市村清。
起業の神様、アイデア社長と言われた彼が遺した...
いま心に刻みたい市村清からのメッセージを紹介いたします。

再生時間【3:21】
今回のことば
もし成功に秘訣があるとすれば、他人の立場を理解し、他人の立場から物事を見る能力を持つことだ。

ナレーション

「適正価格」の導入や「大衆への奉仕の精神」などが社会に受け入れられ、戦後スタートした商店としては、異常な繁栄を見せた三愛でございましたが、昭和25年ごろになると事業縮小を余儀なくされるのでございます。

人事課長

臨時の数人の女学生のアルバイトですか?

そうだ。

人事課長

そんなの雇って、何するんですか?

東京にある大会社、大銀行、大デパートの婦人用トイレットに潜ませて、そこで行われているご婦人方の会話をノートに取ってもらうんだ。

人事課長

ええっ!社長、お気は確かですか?

おお!いたって平常だ!そればかりか、こんなにいいアイデアを思いついた自分自身を褒めてやりたいくらいだ!

人事課長

はあ…。

つまりはこういうことだ。戦後の女性解放によって、家の中で花嫁修業をするより、外に出て働こうという女性が格段に増えているんじゃないか?

人事課長

まあ、それはそうですね。

これからの世の中は、こういった女性が中心になっていくんじゃないか?

人事課長

それと、婦人用トイレットがどう関係しているのかさっぱり…。

いいから!私を信じて!すぐに取りかかりなさい!

ナレーション

この、一風変わったアルバイトに、学生たちは面白がって毎日出かけたのでございました。

アルバイトに頼んでおいたこと、まとめてもらえたかね?

社員A

はい。報告します。今、世の中の恋愛というのは男性対女性店員やオフィスガールとの間に行われているという事がわかりました。

社員B

戦前に購買層の中心であった主婦層は、家庭の生活に追われて、あまり自由にお金を使えないという事です。

社員A

それに付随して、新しい購買力の中心は20歳前後の若い職業婦人に移っており、その中には上流家庭の娘も大勢いるという事がわかりました。

社員B

家庭の枠から出て、働きながら結婚準備をしているので、収入のほとんどは自分のおしゃれの為に使っているとのことでした。

なるほど…。

ナレーション

こうして、トイレ探索という奇抜な市場調査から生まれた市村の構想は…。

婦人のおしゃれ専門店・三愛。

ナレーション

と、今までに、誰も考えつかない斬新なものでございました。

もし成功に秘訣があるとすれば、他人の立場を理解し、他人の立場から物事を見る能力を持つことなんだ。

ナレーション

自分のことばかり考えずに、他人の立場を理解し自分を客観的に見ることが必要なんだと、市村は悟るのでございます。

第10回
事業の本質は、世のため人のために尽くすということにある。

放送日2021年3月9日

タイトルコール

明治33年...佐賀県の貧しい農家に生まれながら、
戦前から戦後の激動の時代に、一代で「リコー三愛グループ」を築き上げた男、市村清。
起業の神様、アイデア社長と言われた彼が遺した...
いま心に刻みたい市村清からのメッセージを紹介いたします。

再生時間【3:35】
今回のことば
事業の本質は、世のため人のために尽くすということにある。

ナレーション

市村は、軍人・役人・商売人と、立場・役職を問わず様々な方々からご教示をいただいておりました。

失礼いたします。市村でございます。

柳川

おお、市村さん。ようきなさった。ささ、そちらへ。

ナレーション

この方はかの杭州湾上陸作戦を成功させた柳川平助とおっしゃる方でございます。柳川様は非常に哲学人的な要素をもっておいでで、軍人でありながら司法大臣を務められたこともある方でございます。

柳川

市村さん、あなたは事業家だが、世界で一番偉い実業家はだれだと思いなさるか?

世界で一番偉い実業家、ですか?

柳川

そう。

考えたこともなかった…ロックフェラーのような大金持ちになって社会事業に莫大な寄付をしている人…いやいや、大実業家ではあるが「一番偉い」かといわれると…。自動車会社フォード・モーターの創設者ヘンリー・フォード!フォードのように新しい生産方式を考え出して次々に事業を経営していく、ああいう人が偉いのではなかろうか…。

柳川

普段、そんなこと考えておられなかったからお困りのようですね。

はあ…じつは、そうなんです。

柳川

では私の考えを申し上げましょう。私は、釈迦が世界一の実業家ではないかと考えるのです。

お、お釈迦様ですか?仏教の?

柳川

ええ。

はあ…。

柳川

ははは、いささかご不満のようですな。お釈迦様がこの世に現れて以来、三千年余りになるが、いままでの仏弟子の数は、恐らく何億という数になる。彼ら仏弟子たちは、釈迦の教えをそのまま伝えるだけで信徒から貢ぎ物を受け、立派な寺院を建ててもらい、伝道以外には働かないで食っていける。

はい。

柳川

また、東洋の大堂伽藍といえばことごとく仏教徒により献納されたものばかりで、日本のいわゆる名所旧跡の大部分もそうでしょう。

清(モノローグ)

なるほど…お釈迦さまになぜ何百億もの人が心を捧げてきたのか。それは私利私欲を捨てて、だれもが幸福になるようにという悲願をもたれたからだ。いいかえると、大きな人類愛の上に立たれたからこそ、それだけの人の心をつかむことができたんだ。

柳川

いかがかな?

まさに!まさにでございます!

ナレーション

事業というものは、ただ儲かるだけではだめだ。あくまで何らかのかたち、意味で社会奉仕をしようという念願のもとに、正しいことを真面目にやることなのだと、市村はこの、柳川との問答を、心に刻んだのでございます。

第11回
儲けると儲かるは違う。儲けるのはどんなにうまくても限度があるが、儲かるということは無限だ。

放送日2021年3月16日

タイトルコール

明治33年...佐賀県の貧しい農家に生まれながら、
戦前から戦後の激動の時代に、一代で「リコー三愛グループ」を築き上げた男、市村清。
起業の神様、アイデア社長と言われた彼が遺した...
いま心に刻みたい市村清からのメッセージを紹介いたします。

再生時間【3:16】
今回のことば
儲けると儲かるは違う。儲けるのはどんなにうまくても限度があるが、儲かるということは無限だ。

ナレーション

昭和22年...市村は、第二次世界大戦の敗戦により荒みはてた明治神宮の再建という無理難題に取り掛かるのでございます。

ずばり!結婚式場・明治記念館!

宮司

結婚式場・明治記念館。

そう!今度の戦争で若いまま未亡人になったり、婚期を遅らせた女性はたくさんいます。また、疎開から戻ってくる人、外地からの引揚者、これはおびただしい数になるでしょう。

宮司

はい。

これらの人が落ち着いた時、結婚に直面する場合が急増するに違いありません。

宮司

なるほど。

もし、憲法記念館のところに、大衆的な結婚式場を開き、結婚相談から、挙式、披露宴の一切を斡旋できるとしたら、世の中の人はどんなに喜ぶ事でしょう!神社といえば、結婚式。今までと全く違う事をやるわけではない!

ナレーション

こうして、廃墟同然の建物を、一カ月足らずで結婚式場にするという、市村の無謀とも思える挑戦が始まったのでございます。

ここに、明治記念館の、開館を宣言します!

財界人

市村君、どうにか間に合ったな?

ありがとうございます。

ナレーション

この明治記念館は、発足してまたたく間に軌道に乗ってゆくのでございました。

幸恵。私は今度のことで、痛烈に感じる事があったよ。

妻・幸恵

なんでございますか?

「か」と「け」の違いさ…。

妻・幸恵

「か」と「け」の違い…。

人間とは欲深いもので、なにがなんでも儲けよう儲けようとする。でも、そういう気持ちでやる事業には人間の欲というものが出てきておのずと限界がある。ところが、世の中の為にやるのだという精神で、その道に外れないようやっていけば自然に儲かっていくものなんだ。また、その方がむしろ、利益は無限に広がっていく。

妻・幸恵

儲ける経営より、儲かる経営、という事ですわね。

ああ。この事は、しっかりと肝に銘じておかなければな。

ナレーション

市村の経営哲学の一項目「儲ける経営より儲かる経営」は、このときの経験に基づくものでございました。

第12回
できない理由を考える前にできる理由を考えてくれ。

放送日2021年3月23日

タイトルコール

明治33年...佐賀県の貧しい農家に生まれながら、
戦前から戦後の激動の時代に、一代で「リコー三愛グループ」を築き上げた男、市村清。
起業の神様、アイデア社長と言われた彼が遺した...
いま心に刻みたい市村清からのメッセージを紹介いたします。

再生時間【3:29】
今回のことば
できない理由を考える前にできる理由を考えてくれ。

ナレーション

昭和25年...敗戦国としてまだまだ物がない時代だった日本。カメラ業界は比較的復興が早かった産業でございました。その二眼レフカメラの世界に、市村率いる理研光学工業株式会社が一石を投じようとしていたのでございます。

新しいリコーフレックスⅢ型は従来のカメラの価格の半額以下を目指したい!

ナレーション

当時の二眼レフカメラは1台2万円から3万円もする高級品。一般大衆には高嶺の花の代物でございました。

社員A

半額以下だなんて!二眼レフカメラが高価なのには理由があるんです!

社員B

カメラなんてのは精密機械なんです!コストを削減するとその精密さに欠けてしまう!無理です!

社員C

いいカメラは、職人が丹精を込めて作り上げるんです!どんなに頑張っても月に数百台作り上げるのがやっと!それを、そんな価格で売るなんて無理です!

社員A

二眼レフカメラは神が与えたもうた芸術品なのです!もう改良する余地もない!無理です!

社員B

この本体鋳物のダイカストだけでいくらかかると思ってるんです?無理です!

社員C

大量生産すればいいですって?いったい何人の職人を雇わないといけないと思ってるんです?無理です!

社員ABC

無理です!無理です!無理です!

できない理由を考えるのは、もう、十分だ。今からは、できる理由を考えてくれ。

社員C

あのう…ベルトコンベアシステムを取り入れると、カメラの大量生産は可能かもしれません。

ベルトコンベアシステム…月どれくらいできる?

社員C

えと…ざっと1万台は可能かと。

よし!

社員B

本体をダイカストではなく板金で製造するとコストが抑えられます。

よし!

社員A

撮影レンズとファインダーレンズのフォーカスリングをギアでかみ合わせて連動するという簡易な方式を採用してローコストに抑えることができます。

専門的過ぎてよくわからんが、とにかく、よし!

ナレーション

こうした様々な努力によってリコーフレックスⅢ型は当初の目標価格を大きく下回る6,800円という価格で発売され、定価販売の銀座三愛の前には東京だけではなく、地方から買い出しに来る人までの行列ができたのでございます。

ときとして、人は「できない」「無理だ」と相手に伝えるため、頭をひねってその理由や言い訳のほうをあれこれ考えることがある。だが、それは後ろ向きの努力だ。どうせ努力するなら、前向きの努力、どうすればできるかを考えようじゃないか!

ナレーション

市村は、営業マン時代には努力という方法で、そして会社の社長になってからは逆転の発想という方法によって、次々と「できない」を「できる」に変えていったのでございます。

第13回
人の行く裏に道あり、その道に徹すれば、必ず道は開ける。

放送日2021年3月30日

タイトルコール

明治33年...佐賀県の貧しい農家に生まれながら、
戦前から戦後の激動の時代に、一代で「リコー三愛グループ」を築き上げた男、市村清。
起業の神様、アイデア社長と言われた彼が遺した...
いま心に刻みたい市村清からのメッセージを紹介いたします。

再生時間【4:00】
今回のことば
人の行く裏に道あり、その道に徹すれば、必ず道は開ける。

妻・幸恵

失礼いたします。

村山

ああ、おかけになって…。

妻・幸恵

…検査の結果が出たのですね。

村山

はい…誠に、残念ですが…市村君は…食道癌です。

妻・幸恵

食道癌…。

村山

あかちゃんのこぶし大の腫瘍が食道に見つかり、それが、頸部のリンパ節と肝臓に転移しております。

妻・幸恵

市村は…市村は助かるんですか?

村山

もって…三か月。

妻・幸恵

さ、三か月?

妻・幸恵(モノローグ)

あまりにも残酷な宣告でございました。私と、市村の五十年来の友である村山医師と、二人、悲しみにくれるほか、何もできる事がなかったのでございます。

幸恵…幸恵はおらんか…。

妻・幸恵

はい…ずっとおそばにおりますよ…。

幸恵…わたしは、最近、楽しい夢を見る事がない…。

妻・幸恵

…どんな夢を見られるんですか?

いつも見るのは、子供のころの苦しかった生活の夢ばかり…そんな夢を見ると、ひどく体にこたえてしまう。

妻・幸恵

…さあ、今日はいい夢が見られますように、私が、ここで、お祈りしておりますから…。

子供は…やはり…苦労させるべきではない…私が、生涯太らなかったのは、その、苦労のせいだったんじゃなかろうか…わたしは、ただ、ただ、精神力だけで生きてきた…。

妻・幸恵

ええ。ずっとおそばで見ておりました。

人の行く裏に道あり、その道に徹すれば、必ず道は開ける。

妻・幸恵

なんです?そのお言葉。

人と同じことをやっていては成功は難しい。自分なりの道に徹することが成功につながる。そう思って生きてきた。

妻・幸恵

ええ。あなたはその通りに生きてこられた…。

私は…人の役に立てたんだろうか…人を助けてやる事が出来たんだろうか…。

ナレーション

昭和43年12月16日。市村は、68年と8カ月余りの、長い人生に幕を閉じたのでございます。
市村が「自分の遺産を投じて、世の中の役に立つ仕事のための基金を作りたい」という考えから生まれた、財団法人・新技術開発財団の設立が、時の首相・佐藤栄作によって正式に認可された、僅か4日後の事でございました。

特別ラジオドラマ

市村清の⽣涯を綴ったラジオドラマをお聞きいただけます。

『あけのひ、あっかいとな ~市村清物語~』ディレクターズカット版

2017年3月、市村清の故郷・佐賀県にあるエフエム佐賀が、開局25周年を記念して市村清の生涯を特別ラジオドラマとして放送しました。前編・創世記58分、後編・革新記68分。 声優陣の迫力ある表現と、楽しい脚本による「市村清物語」をお楽しみいただけます。