今月の市村清

Monthly

“今月の市村清”―2024年3月編―

上空から東京俯瞰

~明日の東京を考える~

3月の風物詩としてすっかり定着した感のある「東京マラソン」。今年も3月3日に開催が予定されています。第一回大会は2007年に石原慎太郎 都政で実現しました。そのコースは東京都庁をスタートし、東京の街並みを縫うように走り、その景観の美しさが人気の理由の一つにもなりました。コース途上には、市村清が手掛けた西銀座デパート、銀座4丁目の三愛ドリームセンター、そして今はコースからはずれてしまいましたが7000人の参列者を集め市村の葬儀が行われた築地本願寺も当初は通過コースになっていたのです。

石原氏と市村が親交深かったことは2月編でお伝えした通りですが、ふたりの年の差は32歳。石原氏が市村に気を遣って、このコースを考えたとは思えませんが、因縁浅からぬ仲で頭の片隅に市村の顔が思い浮かんでいたのかもしれません。

市村は生前、今後の事業の方向性を模索する中で、5年後、10年後の東京がどう変わって行くか、東京を俯瞰するためにヘリコプターを貸し切り2時間ほど上空から東京を眺め視察したことがあります。その時に東京マラソンをイメージしていたとは考えにくいですが、東京を空から眺めていくつかの示唆を与えています。例えば空き地の多さ、そして存外、墓が多いこと。多くの人が年に1~2回程度しかお参りしないお墓が、東京の都心にある必要はないのではないか。郊外の交通の便のいいところにまとめて移したらどうか、と。また、車の多さと交通渋滞の様子を見るに、非効率な物流の仕組みから生じている経済上のロスを指摘し、また大地震など災害時には脆弱な都市基盤が大惨事を生み出すことも憂い、都市計画の抜本的対策の必要性を唱えています。と同時に一朝一夕でできることではないとし、東京都知事はよほどの実行力のある人でなければダメだと言い切っています。まるで、将来、都知事となる石原氏に東京の未来を託すかのように。
この言葉を受けてかどうかわかりませんが、石原都知事の功績の一つとして、道路網の整備と渋滞緩和が数えられています。

石原氏が、市村の追悼に寄せて「市村さんにいろいろなことでお世話になったが、他の人と違って、この借りを市村さんに対しではなく、何かもっと大きな形で社会に向かって返さないといられないようなものをいつも感じさせられた。」と語った通り、まさに、都知事になって市村からの借りを返したのではないでしょうか。

今日のひとこと
〜市村清の訓え〜


今日のひとこと 〜市村清の訓え〜