今月の市村清 Monthly
“今月の市村清”―2026年6月編―
アイデアはこうして生まれる
―「なぜ」という疑問を持つことが大事―
先日、4月17日に市村清新技術財団が主催する市村賞の贈呈式が帝国ホテルで開催されました。市村賞は、科学技術の進歩や産業の発展に貢献した個人・グループを表彰するもので、主に産業技術を対象とする『市村産業賞』及び学術研究を対象とする『市村学術賞』の2つの分野で構成され、地球環境分野への貢献も評価されます。
贈呈式は財団の総裁の彬子女王殿下にご臨席いただき、受賞された皆様へのお言葉がありました。今回のお話は『新しいアイデアは“なぜ”という疑問を持つことから生まれる』という市村のエピソードを交えた内容でしたので、このエピソードについてもう少し詳しく紹介したいと思います。
市村は方々で講演会を開催すると、参加者から必ず「成功の秘訣」と「新しいアイデアはどうして生み出すのか」という2点についての質問を聞かれました。新しいアイデアを生み出すコツとして、まず現状を否定すること。そして何を見ても「なぜ」という疑問を持ち、疑問を持ったら必ずそれを追求する。これで良いと思ったら何も出てこないし、疑問を持ったとしてもそのままにすれば何も生まれてこない、と答えています。
そして、アイデアを生み出すヒントとして市村は、懇意にしていた八幡製鉄の島村専務との話を挙げています。島村専務はある時、『死亡広告によく“薬石効なく”とあるが、“薬”は分かるけれど“石”とはどういう意味なのだろう』という疑問を持ったそうです。そして、実際に石がこれまでどんな治療に使われていたのか、どんな効果があるのかどんどん追及していくと、石にはたくさんの種類があり、中には酸素や他の元素を吸収する石もあることを発見しました。そこでこの石を加工してもっと酸素を吸収させて製鉄所で使えば、かなり燃料費が安く済むかもしれないと研究を進め、いずれはこの発見がコストダウンに大きく寄与するかもしれない…。
“どうして”という疑問を持ったらとことん追求することで次々新たな発見が生まれる、それがまた次の事業の新しいアイデアとして登場してくる。しかもそれが画期的な発明になりうるかもしれない。これがアイデアの生まれる一番のモトである、としています。
世の中はビッグデータにあふれAIの利用が当たり前、どんな疑問も簡単に答えを導くことが可能になりました。AIなどの高度な技術をうまく活用するのは良いことだと思いますが、それでも、常にアンテナを張ってどんなことにも“何で“、”どうして”と気付くことからアイデアの種が生まれます。いろんなことに興味を持ち、どんなことにもチャレンジしてみると、意外と自分の近くに新しいアイデアのヒントがあるかもしれないですね。