今月の市村清

Monthly

“今月の市村清”―2025年10月編―

社員旅行

―太っ腹な市村清―

10月編に取り組んでいる今日は9月8日。観測史上最も暑い夏は未だ続いていますが、さすがに10月の声を聞いて、6月から続いた夏の暑さも収まっていることを願っています。

さて、10月といえばスポーツの秋、食欲の秋、読書の秋、と様々な楽しみがありますが、もう一つ旅愁を誘う季節でもあります。最近では、社員旅行を実施する企業が少なくなってきているようですが、市村清の時代には、秋口になると、従業員の士気を高め、チームワークの醸成のために、多くの会社で社員旅行が行われ、当時の三愛会会誌には、そのような旅行での太っ腹な市村の姿を垣間見ることができます。

一つは、日本リース設立当初、昭和39年(1964年)頃のお話。秋の旅行で箱根を訪れています。芦ノ湖でフリーの時間に、モーターボートに乗りたかったが料金が高くみんな渋っていたところ、社長にたかろうという話になり、新人Fさんがおだてられて市村社長のもとに。「すみません。モーターボートに乗りたいのですが、少しご寄付いただけませんか」すると、ポーンと財布をそのまま渡され、仲間のもとに行き、中を開けたら十数万円入っている。新人の給料が9,600円の時代ですから、今でいえば、200~300万円入っていたということでしょうか。結局、1万円だけ頂戴して、あとは返しに行ったそうですが、市村は「全部やるつもりだったんだよ」と豪快に笑ったそうです。なんとも太っ腹な社長ではありませんか。

もう一つは、さらに10年遡り、昭和30年(1955年)。三愛の創業10周年を記念して行った、京都への2泊3日の慰労旅行は、総勢136名。東京駅から特別2等車(今でいうグリーン車)を3両貸切っての出発でした。日本で最も豪華な慰労旅行と言われ、「アサヒグラフ」の記者が、密着取材を行い、雑誌にも特集されたようです。
既に「おしゃれの三愛」に業態が変わっており、その社員の皆さんですので、着飾った姿はさながら京都を舞台にしたファッションショーのようだと話題になったそうです。

往復の旅費5,880円、2泊の宿代3,000円、そして旅行中のお小遣い4,000円は現金支給、その他諸々で一人当たり15,000円を全て会社が負担。国家公務員の初任給が8,700円の時代ですから、その豪華さは推して知るべし。
皆が皆、初めての特別2等車で、「やるなら一流を!」という市村流の太っ腹な慰労旅行であったのでしょう。

画像:三愛・創立10周年記念社員旅行 車内でくつろぐ市村清と幸恵夫人
三愛・創立10周年記念社員旅行 車内でくつろぐ市村清と幸恵夫人