今月の市村清 Monthly
“今月の市村清”―2026年4月編―
人の心も物の形も丸がいい
―丸みを好んだ市村清―
市村清は「円形(円)」を好み円形に強いこだわりを持つ経営者として知られていましたが、これは単なるデザインの好みではなく、彼の思想そのものを表しています。服装や髪形などにはこだわりを一切見せない一方で建築やインテリアのデザインには鋭い感性を持ち、円形へのこだわりとして三愛ドリームセンターはつとに有名です。そして故郷 佐賀に寄贈した市村記念体育館の斬新なデザインは今も高い評価を得ています。現在、市村清新技術財団の本部が置かれている旧市村邸の玄関を入るとすぐに目に留まる2階へと続くらせん階段が印象的で、お客様を迎える応接間には円形の出窓を作り、そこに円形のソファーをしつらえています。市村は部屋の隅には観葉植物や花を置き、角を消す徹底ぶりだったといいます。心理学的に見ると、円形は「包容」や「結束」を象徴することから「丸」という形に強くこだわりを持つ人は調和と平和を重んじる平和主義者、高い共感性と感受性を持つと評される。また円形は数学的に「始まりも終わりもない完全な図形」であり、完璧主義と完全への憧れを持つ職人気質な一面を表すと言われています。
実際に市村は三愛ドリームセンターの設計段階で「四角いビルは嫌だ、必ず丸い建物にする」と言って前例のない円筒状の建物を設計しました。「円は角がない。人と人が争わず、調和する形なんだ、そして円は中心がある。そこに人が自然に集まる。」だから四角い建物ではなく円形にして銀座の交差点に人が集まる“円”を作りたいんだ」と強く主張したのです。三愛ドリームセンターについては後日のインタビューでも「三愛の心を形にしたくて、表現したのがこの建物だ。」と応え、つまり三愛ドリームセンターは「三愛精神」を具現化したものなのです。自身の理念そのものが銀座のど真ん中に立つ姿は市村の気持ちをどれほど高揚させたことでしょう。そして、社員の気持ちを奮い立たせたのかは想像に難くありません。1963年1月13日世間の度肝を抜いた午前0時のオープニングセレモニーから63年にわたり銀座の街に市村の思いを照らしてきた三愛ドリームセンターは建て替えが決まり、2027年の竣工を目指して着々の建設工事が進められています。新しいビルのコンセプトを「CIRCULAR(サーキュラー) -めぐり めぐる よろこび-」とし、市村の思いを継承しながら、多様な人々が集い、“はたらく歓び”の共感が持続的に生まれ循環する、環境に配慮された空間となることを目指しています。
果たして新しいビルはどんな驚きと感動をもたらし、リコー三愛グループの夢を重ね銀座の街に光を照らすことでしょう。2027年が待ち遠しいですね。