今月の市村清 Monthly
“今月の市村清”―2026年10月編―
事業におけるプラス・マイナス採点法
―惜しまれつつも閉館する「札幌パークホテル」―
市村清が事業に着手するときに自ら考案した「プラス・マイナス採点法」は、1度は耳にしたことがあるという方も多いと思います。プラス・マイナス採点法は事業を始めるにあたり、メリットとデメリットを精査してメリットが60%以上と採点できれば実行に移すというものです。採点は慎重に行われますが、義理人情に厚い市村のことですから、その採点には数字では表すことのできない目算も含まれていたことと思います。この採点法は北海道の札幌にホテルを建設するときに生まれたもので、「札幌という立地条件はシーズンオフが半年近くあるので、マイナス70点、しかし、地域独占の事業になるのでプラス80点。その他……」、総合点がプラス60点以上になると判断して建設を決断しました。1964年に北の大地 札幌に格式高いホテルとして誕生した「ホテル三愛」。設計は日本を代表する建築家坂倉準三氏によるもので地上11階、地下3階、総工費は当時の金額で45億円を投じました。外壁を覆う無数のタイルは坂倉ブルーと言われる特徴的な色合いで表現されており、市村のふるさと佐賀を代表する有田焼の窯元で1枚1枚丁寧に作られました。巨額の資金を投じ最高級のラグジュアリーホテルを完成させた市村でしたが、多額の償却費を抱え1日百万円にのぼる金利を負担しながら、増資の対策をとる時期も遅れ健全な経営とは言えなくなり、リコー本体の業績不振も重なり、わずか2年足らずで手放すことになりました。
その後、ホテル三愛は運営会社が何度か変わりましたが、「札幌パークホテル」として営業を続けてきました。名称は変わっても、札幌パークホテルの歴史に市村清の名が刻まれ、三愛精神は創業の精神として受け継がれているそうです。そしてこのたび、札幌パークホテルの建て替えが決まり惜しまれつつも2027年2月末に閉館することが発表されました。一流のおもてなしと素晴らしいロケーション、味わい深い食事を提供し国賓をはじめ多くの人々を魅了してきましたが、建物の老朽化は避けることができず63年間の歴史に幕を下ろすことになりました。札幌パークホテルの館内装飾の一部は創業当時から変わっておらず、そこには市村の思いを感じることができます。閉館までの残り時間もわずかとなりましたが、市村が情熱を注いだホテルを目に焼き付け、市村がこのホテルで過ごした時間を想像してみる最後のチャンスですので、ぜひ機会があれば訪れてみてはいかがでしょうか。
新しいホテルは2030年頃の開業を目指し、札幌市からの要請に応え充実したMICE機能も有する最高級ホテルとして生まれ変わります。