今月の市村清 Monthly
“今月の市村清”―2026年5月編―
市村幸恵夫人が佐賀県に寄贈した茶室「清恵庵」
―国登録有形文化財に―
映画『国宝』が 歴代興行収入1位を更新しロングラン上映が続いていますが、今月は市村幸恵夫人が佐賀県に寄贈した茶室「清恵庵」が令和8年2月10日に国登録有形文化財に登録されたことを紹介したいと思います。
清恵庵を管理している佐賀県立博物館に申請の経緯を伺うと、佐賀県立博物館所有の「岡田三郎助アトリエ」が清恵庵に先行して令和4年6月に国登録有形文化財に登録されました。その準備の過程で文化庁の建造物担当調査官に指導を受けていた際、清恵庵も現地指導を受け登録にふさわしいとのコメントを頂き、昭和48(1973)年10月竣工の清恵庵が令和5(2023)年10月で50年を超え、文化財登録の条件を満たすこととなったため、登録に向けた準備を進め令和6年に再度文化庁調査官の現地指導を受けたうえで、令和7年に県文化財保護・活用室を通じて文化庁へ意見具申書を提出し、令和7年11月に国の文化審議会で登録の答申をし、令和8年2月に官報告示されました。国登録有形文化財となるまでには現地調査や事前の審査などさまざまな過程を経て実現しました。
四季折々、移り変わる景観との調和も計算され尽くしたこの茶室の設計は日本近代の茶室建築の第一人者である堀口捨己氏と弟子の早川正夫氏によるもので、四畳半の茶室(小間)と七畳半の広間兼水屋、寄付(よりつき)、台所、トイレで構成されています。また、庭には大きな手水鉢がありますが、これは乃木稀典大将から市村家に寄贈されたものと言われています。堀口氏が設計した茶室で公共の場に置かれ誰でも中に入れるのは全国でも清恵庵のみであり、佐賀県の施設として茶会や茶道の研修会などに利用されています。彼の遺作となった清恵庵は貴重な建築資産として今でも見学の申し込みが絶えることがなく、最近は茶会以外にもコスプレイヤーが集い撮影会会場として利用されることもあるそうで若い世代にも親しまれていることを実感します。
佐賀県では建造物の価値について国のお墨付きをもらえたことで将来的な保存・活用がしやすくなったというプラスの効果が生まれました。今後ますます利用者、見学者が増えていくことでしょう。清恵庵が、これまで同様、佐賀県の皆様に大切に利用していただくことが市村夫妻にとっても喜ばしいことと思います。