市村清ゆかりの人物
  吉村吉郎

ゆかりの人物「吉村吉郎」について
ご紹介します。

吉村吉郎プロフィール

生没年1875.2.8~1942.11.20

職業佐星醤油当主

本業の他に富国生命保険佐賀代理店、理研感光紙九州総代理店を兼業。市村に理研感光紙九州代理店の権利を譲渡した。

市村の人生の岐路に影響を与えた人

吉村さんは、ボクに理研感光紙の九州総代理店の権利を譲ってくれたんだ。保険の外交をしていたボクが吉村さんと出会い、そこで理研感光紙と運命的な出会いが・・・。ボクの人生、最大のターニングポイントだよ。

吉郎が市村に譲渡した営業権は、
佐賀発リコー行きの列車の切符?!

吉村吉郎(よしむら きちろう)は1875(明治8)年、佐賀藩士・黒田平八の次男として誕生、その後、1898(明治31)年に江戸時代から続く穀物商「吉村商会」の3代目当主・吉村善次の婿養子となりました。
善次の跡を継いで4代目当主となった吉郎は、佐賀醤油会社を設立して醤油醸造業を開始、1902年には合資会社に改組して、順調に業績を伸ばしていきました(のちに屋号を佐星醤油に変更)。資産も、1903年創設の佐賀馬車鉄道に出資するなど、潤沢でした。
1909年、吉郎は34歳で佐賀市会議員に当選し、地域および醸造業界のリーダー的存在として活躍。また吉村商会は穀物商、醤油醸造業のほかに、富国徴兵保険や味の素、理研陽画感光紙の佐賀代理店も手掛けるようになっていました。
理化学研究所の桜井季雄博士が発明した理研陽画感光紙を取り扱う代理店は、神戸地区の鈴木商店、東海地区の大島屋など全国に5社あり、九州地区の権利は吉郎の実妹・黒田チカが理研の研究員をしていた関係で吉村商店が取得しました。
黒田チカは、日本初の女性化学者と称された人物です。東北帝国大学(現 東北大学)を卒業して、英国オックスフォード大学に2年間留学、帰国後、東京女子高等師範学校(現 お茶の水女子大学)の教授を務めながら、理研で天然色素の研究に励んでいました。
しかしながら、吉村商会の感光紙事業は業績不振で、吉郎の頭痛のタネでもありました。
ちょうどその頃、富国徴兵保険の代理店でもあった吉村商会によく訪れていたのが市村清です。

大陸から帰国後、保険外交員として熊本で抜群の成績を上げた市村は、その腕を見込まれて佐賀県の富国徴兵保険の監督に転任、ここでも順調に成績を伸ばしていました。
市村は契約がまとまるたびに書類を持ってやって来ましたから、吉郎と顔を合わせることも多く、話好きの二人はたちまち懇意の仲となりました。
“そうだ、市村さんに感光紙の営業も頼もう!”
吉郎は早速行動に出ました。
「市村さん、保険をやめて、天下の理研の仕事をしませんか?」
「なんですか、やぶから棒に!」
「理研感光紙代理店の経営ですよ。私と利益折半でどうですか?」
市村にとって、“天下の理研”という言葉はとても魅力的でしたが、吝嗇(りんしょく)家で有名であった吉村のことを知っていたので、うかつな返事はできません。
“共同経営は危ないな。やるなら、権利を譲ってもらおう。でも、資金がない・・”
悩んでいる時にやって来たのが、吉郎の養子の勉でした。「市村さん、おやじはあなたに権利を売りたがっているんですよ。一向に業績が上がらなくて、理研から解約の話が出ているんです」
勉の言葉に力を得た市村は、吉郎と交渉することにしました。
「吉村さん、私に理研の権利を譲ってくれませんか?」
「1万円ならお譲りしましょう!」
「2千円に負けてくれませんか?」
「話になりませんな」
しばらくして、再び勉がやって来ました。
「理研から最後通告が来ました。今ですよ!」
何度かの駆け引きの末、結局は吉郎が折れて、2千円で譲渡が決まったのです。
この後、市村と理研陽画感光紙の製造販売元である理化学興業(株)との間で契約に関して一悶着ありましたが、それも片が付き、1929年、市村は吉村商会の名を引き継いで九州総代理店を開業しました。
市村の人生列車は、その後、“大河内博士の招へいで理化学興業本社の感光紙部長に就任”から“理研光学工業(現 リコー)設立”へと続くレールを走ることになるのですが、もちろん、この時はまだ知る由もありません。
一方、吉郎はその後、佐賀商工会議所の会頭に就任、江戸時代から続く家業も守り続けました。現在、佐賀市唐人町のランドマークとなっている佐星醤油の本店事務所は、1931年に吉郎が建築した建物です。曲線を生かした大きなガラス窓などアール・デコ様式を思い起こさせる昭和初期のモダンな洋館に、当時の繁栄ぶりがしのばれます。
市村と吉郎との出会いは、市村と理研感光紙の運命的な出会いでもあり、人生の大きな岐路であったといえましょう。
吉村吉郎(右)、妹 黒田チカ(左)
吉村吉郎(右)、妹 黒田チカ(左)
佐星醤油
佐星醤油
感光紙の保存缶(佐星醤油 所蔵)
感光紙の保存缶(佐星醤油 所蔵)
陽画感光紙保存箱(佐星醤油 所蔵)
陽画感光紙保存箱(佐星醤油 所蔵)

ここでも学べる!
吉村吉郎

以下のページでも吉村吉郎について知ることができます。